
参院選控え与野党がアピール合戦
所得格差拡大には別途、対応策を
7月の参議院選挙を前に、物価高やトランプ関税への対応策をめぐって、与野党が確たる財源を示さずに大幅な減税や政府支出の拡大を掲げる動きが目立っている。
票目当てのアピール合戦の様相だが、その効果や問題点などへの十分な議論が行われないまま、SNSでの拡散により賛同者が増えつつあるようだ。
聞こえがいい政策を訴えて、その主張の実現を目指すポピュリズム政治は世界的に強まっているが、日本でも、ネットを活用して短期的な仕事を選択するギグワーカーの増加や就職氷河期世代の高齢化などによる中間層の二極分化、所得格差の拡大や、社会保障が高齢者に偏ることへの若者や現役世代の不満の強まりから、財政ポピュリズムの状況を生んでいる。
とりわけその象徴は 「税率5%引き下げ」や「食料品ゼロなどを掲げる「消費税減税」の大合唱だ。
一方で 国会審議中の年金改革法から「基礎年金の底上げ策(充実策)が削除されたが、その最大の理由は「基礎年金の半分は税財源なので、底上げには財源確保で増税論議を惹起させる」ということだった。
年金を拡充するには税財源が必要になるという”不都合な真実”をわかっていながら、見ないふりをしているかのように、一方で消費税減税を主張するという政治の劣化が起きている。
「消費税減税」で、いまの日本の経済社会の本質問題を解決できると考えるのは安直すぎる。ドイツや英国などの例を見ても、「財源なき消費税減税」が愚策であることは明らかだ。