頭ではわかっているつもりでも、私たちはつい自分の望みやメリットを前面に出して、相手を動かそうとしてしまいがちです。
カーネギーの例を、自分事として考えてみましょう。愛する子どもが隠れて煙草を吸っていたと知ったとき、多くの親は「そんなことをしてはダメだ」と正論で責めたくなるはずです(私もそうしないという自信はありません)。
でも、それは自分の気持ちをぶつけているだけで、おそらく子どもの心には届きません。
大切なのは子どもの視点に立ち、どうすれば本人が自分からやめたいと思えるかを考えること。「野球選手になりたい」「運動が得意になりたい」「美肌をキープしたい」、そんな願いがあるのなら、「煙草を吸うと、その夢や願いに近づけなくなるかもしれないよ」と伝えるほうが、はるかに響くのです。
「参加したい」と
思える企画になっているか
これは、ビジネスでもまったく同じです。自分のアイデアや提案について興味を持ってもらいたいなら、まず考えるべきは「この人は今、どんな目標を持っているのか?」「何に悩んでいるのか?」ということ。
そのうえで「この提案が、あなたの力になれるのでは」と差し出すことができたなら、それは“ミミズを差し出す釣り”と同じく、相手の心に届く力を持つはずです。
『BEYOND 2020 NEXT FORUM』を企画したときにも、この考え方が活かされました。
企画の立ち上げは、2019年。2020年以降の日本の活性化を目的に、ダイバーシティ、イノベーション、スタートアップ、エンターテインメントなどのテーマのもとに、多様なフォーラムを実施するプロジェクトで、私は代表幹事を務めました。
このプロジェクトには、さまざまなジャンルで活躍する20~50代の著名人が参加。アソビシステム代表の中川悠介さんや、ドワンゴ取締役の横澤大輔さんも、そのメンバーです。彼らから「同世代との横のつながりはあるけれど、上の世代との縦のつながりがあまりなかったので、この機会にネットワークをつくれてありがたい」という言葉をもらったときには、まさにこのプロジェクトの意義がかたちになり始めていることを感じました。