コンセプトというと、企画趣旨やアイデアそのものを思い浮かべる人も多いかもしれません。けれど、ここでいうコンセプトとは、「何を信じ、どんな未来を目指しているのか」という、もっと根本的な旗印のようなものです。
たとえば、二十一世紀倶楽部(編集部注/1987年に著者が仲間たちと設立した異業種交流団体。21世紀における人材創りが目的)が掲げた「混迷の時代に新しい物差しをつくる」というコンセプトが、まさにそれです。
若者自身が問いを立て、未来を考えようとする姿に、多くのレジェンドが共鳴してくれました。
“旗印”のもとに同志が集まれば
次にやるべきことが見えてくる
なかでも、衆議院議員だった中川昭一さんは、二十一世紀倶楽部のコンセプトに深く共感し、スーパーバイザーとしてさまざまな相談に乗ってくださいました。多いときには週に何回もともに時間を過ごし、政治や経済、国際情勢から音楽、スポーツ、芸能まで、幅広いテーマについて夜遅くまで本音で語り合ったことをよく覚えています。
どんなに優れた人がいても、またどれほどよく練られた企画があっても、そこに明確な旗印がなければ、人は集まりません。逆にいえば、「この人はどこを目指しているのか」がはっきり伝わったとき、人はそのビジョンに共感し、自然と動き出してくれるのです。
たとえば、私は現在、『JAPAN MOVE UP! 日本を元気に!』というプロジェクトの総合プロデューサーを務めています。もともとは東京タワー50周年に向けて、2007年に立ち上げた『TOKYO MOVE UP!』が出発点。小山薫堂さん、別所哲也さん、リリー・フランキーさんらと、東京から日本を元気にするさまざまなイベントを企画しました。
その後も、共通の想いのもとにつながりは続き、やがて東京五輪の招致活動や、現在のJAPAN MOVE UP!プロジェクトへと広がっていったのです。
旗印のもと、志を同じくする人が集まれば、不思議と次にやるべきことが見えてくる。コンセプトには、そんな目に見えないパワーがあると実感しています。
コンセプトとは、資料や会議の冒頭に掲げるだけのものではありません。それはむしろ、人がともに動き出すための共通言語であり、信頼と共感を育てる土壌なのです。