ウクライナとヨーロッパ各国は、「ロシアに対する安全保障の確保、とくにウクライナ戦争の再発防止」「トランプにNATOの立場での調停期待」「アメリカのヨーロッパへのコミットメントの継続確保、とくに平和維持軍への米軍参加」などが考えられる。

 中国は、「トランプ政権の弱体化」「米ロ分断」「ロシアの消耗」などの見地から、トランプによる和平調停が失敗し、戦争が長期化することを望んでいるものと考えられ、水面下で密かに和平調停の妨害を画策している可能性がある。

 ちなみに、北朝鮮がトランプの和平調停にコミットするかどうかは分からないが、金正恩の思惑としては「ウクライナ戦争調停への関与」「朝中・朝ロ関係の維持――切り捨て危惧」などが考えられる。

有利な立場のプーチンが
和平交渉で譲歩するとは思えない

 和平調停の前提条件としては、「トランプによる和平調停をプーチンとゼレンスキーが受け入れ、和平協定締結まで交渉が持続すること」「ウクライナ戦争が現状のような膠着状態を継続すること」「“中国の台湾侵攻”のようなアメリカにとって深刻な事態が起こらないこと」「トランプ、プーチン、ゼレンスキーに健康問題や失脚などの非常事態が起こらないこと」などが考えられる。

 プーチンとゼレンスキーにとって和平調停交渉は文字通り“弾を撃たない戦争”であり、簡単に合意することはできない。お互いに、少しでも有利な条件で妥結するために、厳しい交渉が延々と続くことが予想される。

 ロシアは2022年以前、すでに4万200平方キロメートルのウクライナ領土(クリミア、ドネツクとルハンシクの一部)を支配していたのに加え、2022年3月の全面侵攻以降はさらに11万900平方キロメートルの領土を占領し、合計でウクライナ領土のほぼ27%にあたる16万1000平方キロメートルを占領している。

 現在も、戦いを有利に進めており、和平交渉を行う場合、プーチンはゼレンスキーよりも圧倒的に有利な立場にある。

 ゼレンスキーはロシアとの停戦交渉のために、2024年8月に越境攻撃を開始し、ロシア西部クルスク州の約100平方キロメートルの領土を掌握したと報じられた。