膨らんでいるリチウムイオン電池を廃棄するには?

 さて、最後に残ったのが、膨らんでしまったリチウムイオン電池をどうやって廃棄すればいいのかという問題だ。

 メイン回収ルートの1つであるJBRCルートでは、膨らんだリチウムイオン電池は回収対象とならないと明記されており、地方自治体でも回収できない場合が多い※。

※ただし、特に膨らんでいるかどうかについての記述がない地方自治体もあるので、その場合は膨らんでいるものも回収してくれる可能性はある。また、前述した環境省からの通知にも、「発煙・発火の危険性があるため、膨張・変形したリチウム蓄電池等は他のリチウム蓄電池等とは別に回収、保管することが望ましい」とあるので、地方自治体については膨らんでしまったリチウムイオン電池も回収することが前提とされているようだ。

 JBRCルートでは不可、地方自治体も現状では対応していないところが多いとなると、膨らんでしまったリチウムイオン電池をどうすればいいのか?

まずは消防署と連携、長期的には膨らんだリチウムイオン電池の回収ルートを確立したい

 滝沢さんも、これが今一番解決すべき問題だと考えている。

「今のところ、膨らんだリチウムイオン電池やモバイルバッテリーを回収する、全国的な体制はありません。大きな缶の中や使い古したフライパンで挟むなどして、ベランダなどに出して置いておくように指示されていますが、万一燃えても火災になる確率が下がるだけで、危険なことには変わりがなく、根本的な解決にはなっていません」

滝沢秀一さん滝沢秀一さん

 そこで、滝沢さんはリチウムイオン電池の回収について、消防と連携するというアイデアを実行に移そうとしている。

「長期的には法律で対処していくことが必要だと思っています。JBRC会員ではない海外メーカーの粗悪なモバイルバッテリーなどの製品は、日本では販売できないようにするイメージですね。しかし、それには時間がかかるでしょうから、まずは、消防署と提携をしたいと考えています。消防署は日本全国どこにでもありますし、火を扱うプロフェッショナルですから、万一火が出ても対処できるわけです。消防署内に耐火仕様の回収ボックスを設置させてもらいます。リチウムイオン電池によってゴミ収集車に火災が起きてしまうと、消防署から怒られるのは清掃業界側なんです。周知が足りないと。火災で損害を受けるだけでなく、さらに怒られる。川口市や守谷市では、ゴミ処理施設に火災が発生したことで、数十億円もの損害が出ています。それを補填(ほてん)するのは税金であり、もう大きな社会問題になっているわけです」

 ヨーロッパではEPR(Extended Producer Responsibility:拡大生産者責任)という考え方が広まっている。これは、製品の生産者が、製品の設計から廃棄・リサイクルに至るまで、製品のライフサイクル全体に対して責任を負うという考え方である。

「長期的には、リチウムイオン電池だけでも、EPRの視点を取り入れ、作った企業が責任を持って回収することを法律で定めることが重要になる。さらに、我々消費者も、単に安いからといって購入するのではなく、廃棄するときのことまで考えて、JRBC会員メーカーの製品を購入すべきだ」

 日本では、スマートフォンなど電波を発するものについては、日本の電波法で定められた技術基準に適合することを証明する「技適マーク」を取得し、マークを付けないと販売できないことになっている。リチウムイオン電池についても、安全対策を施したものについては認可を取得し、そのマークを付けたリチウムイオン電池しか販売できない、などの対策が必要になってくるかもしれない。

>>後編に続く