もちろん、リチウムイオン電池を搭載した機器を製造するメーカーも対策を行っている。名の知れたメーカーの製品なら、通常の使い方をしている最中に、いきなり燃えだすことはほぼないといっていい。

 しかし、モバイルバッテリーやハンディ扇風機などは、海外の小さなメーカーが製造している場合も多く、安全対策が不十分な製品もある。安価なものはなおさらだ。

 安全対策が施された製品でも、リチウムイオン電池が劣化してくると、発火の危険性が高くなる。リチウムイオン電池は劣化が進んだり、強い衝撃を受けたりするとガスが発生し、電池パックが膨らんでくる。電池部分が膨らんできたら、危険なので即刻使うのをやめるべきだ。

リチウムイオン電池が膨らんだ古いスマートフォン。安全対策が施されている製品でも、古くなると劣化し、電池パックが膨らんでくる リチウムイオン電池が膨らんだ古いスマートフォン。安全対策が施されている製品でも、古くなると劣化し、電池パックが膨らんでくる Photo:Diamond

夏はリチウムイオン電池の火災事故が増える季節

 リチウムイオン電池の普及に伴い、火災事故が急増している。東京消防庁の調査では、2023年度に都内で生じたリチウムイオン電池による火災件数は167件で、7年前の約3倍に増えている。

リチウムイオン電池による火災は年々増えているリチウムイオン電池による火災は年々増えている(出典:東京消防庁)
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 リチウムイオン電池は高温になるほど発火の危険性が増すため、夏は一番火災件数が多くなっている。車の運転席に放置されていたモバイルバッテリーが高温になり、発火する事故も報告されている。

 また、環境省の調査では、リチウムイオン電池が原因とみられるゴミ収集車や処理施設での出火や発煙は、2023年度に2万1751件起きており、1日あたり約60件のペースで発生。このうち出火は1万5145件で、5割強は職員が手動で消火、4割は散水設備などで対応した。84件は消防隊が消火したとのことだ。