
最近、ゴミ処理施設で、間違った電池の捨て方をしたことによる大規模な火災が頻繁に起きているのをご存じだろうか。2024年12月には茨城県守谷市のゴミ処理施設で大規模な火災が発生、現在も施設が停止したままだ。同年12月には千葉県印西市、2025年1月には埼玉県川口市、4月に愛知県大口町、そして6月と8月には愛知県岡崎市と、あちこちのゴミ処理施設で火災が発生している。これらの火災の原因とみられているのが、モバイルバッテリーなどに使われるリチウムイオン電池である。こうした状況に、「死人が出ないのが奇跡」と警鐘を鳴らすのは、お笑い芸人とゴミ清掃員の“二刀流”で知られる、マシンガンズ・滝沢秀一さんだ。ゴミ処理施設で火災が起きたらどういう事態が起こるのか。リチウムイオン電池にはどういう危険があり、どう捨てれば安全なのか、滝沢さんに話を聞いた。(ITジャーナリスト 石井英男)
モバイルバッテリー、小型扇風機……リチウムイオン電池は「燃えやすいもの」
モバイルバッテリーの発火事故が増えている。
2025年7月20日、山手線車内でモバイルバッテリーから出火し、5人が軽傷を負う事件があったことは記憶に新しいだろう。また、2025年7月8日から、飛行機内でのモバイルバッテリー利用ルールが変更され、かばんなどに入れて座席上の収納棚に入れることが認められなくなり、モバイルバッテリーから充電を行う場合は、手元や前の座席のポケットなど、常に状態を確認できる場所での保管・利用が求められるようになった。
背景にあるのは、リチウムイオン電池を利用する機器の急速な増加だ。リチウムイオン電池は軽くてエネルギー密度が高いため、スマートフォンやタブレット、ノートPCをはじめ、ハンディ扇風機や電子タバコ、モバイルバッテリー、コードレス掃除機、電動自転車、ワイヤレスイヤホン、スマートウォッチなど身の回りのさまざまな機器に使われている。
リチウムイオン電池は、他の電池と比べて原理的に「非常に燃えやすい」電池である。リチウムイオン電池の中には、電解液としてリチウム塩を有機溶媒に溶かした液体が入っているのだが、この液体は強い引火性があり、非常に燃えやすい。実際は液体がそのまま入っているわけではなく、電極やセパレーターに染みこんだ状態になっており半固体状になっているが、電池パックが破れて電解液が漏れたり、セパレーターが破損してショートしたりすると、高熱が発生して発火する可能性がある。リチウムイオン電池とは、それほどに「燃えやすいもの」なのだ。