ウォーレンは日本円建ての債券市場から、67億ドル分の円を平均金利0.6パーセントで調達できたため、受けとる配当と支払う金利の差(2パーセント-0.6パーセント=1.4パーセント)を、1年間の稼ぎとみなすことができた(67億ドル×1.4パーセント=9380万ドル)。また、商社から受けとる配当は円であり、この円は円建て社債の金利支払いに充当できた。このように、ドル/円の為替変動リスクは回避されている。遠い将来にウォーレンが日本株を処分し、〈バークシャー〉の資本利得として米国内へ持ち帰るまでは……。

 2023年末の発表によれば、〈バークシャー〉は日本の債券市場でさらに資金を調達し、円建て債務の総額を88億ドルまで膨らませた。また、総合商社5社の持ち株比率もおよそ9パーセントに上昇させた。2024年のウォーレンの報告によれば、総合商社5社に対する投資は、すでに80億ドル以上の含み益を抱えている。

ウォーレンが抱いた
熱い〈アップル〉愛

我々が保有するビジネスの中で、
〈アップル〉ほど優良なビジネスはない。
人々は〈アップル〉のiPhoneに1000ドルを払い、
セカンドカーに3万5000ドルを払うが――
どちらかを諦めろと言われたら、
セカンドカーのほうを諦めるはずだ

 ウォーレンの目に映る〈アップル〉は、消費者の心の一部を所有している商品を、複数種類ラインナップするグローバル企業だ。同社の事業の経済性は、ウォーレンの〈アップル〉愛をさらに燃えあがらせた。

 2012年から2016年までのあいだに、〈アップル〉の1株当たり利益は1.59ドルから2.08ドルに上昇した。年間成長率は複利計算でおよそ5パーセントだ。1株当たり利益を2.08ドル、購買価格を年間平均価格の34ドルとした場合、ウォーレンの立場からはこう主張することができる。自分が手に入れた〈アップル〉社の“エクイティ・ボンド”――株式と債券のいいとこ取りができる金融商品――は、初年度の収益率が6.1パーセント(2.08ドル÷34ドル=6.1パーセント)になり、この先も年5パーセントずつ成長していく、と。また、〈アップル〉は1430億ドルの現金を保有しており、積極果敢に自社株の買い戻しを実行している。