ウォーレンが予測しきれなかったのは、1990年代末、安い中国製の靴が洪水のごとく米国市場へ流れ込み、〈デクスター〉のビジネスモデルが破壊してしまったことだ。メーン州にある国内工場の人件費は高く、中国の安い労働力とは競争にならなかった。〈デクスター〉は現在でも靴を製造しているが、会社の規模はウォーレンが買収したときの数分の一に縮小した。最近、いちばんひどいミスは何かと問われた彼は、〈デクスター製靴〉と即答している。「わたしは〈バークシャー〉の――素晴らしいビジネスの――─1.6パーセントと引き替えに、価値のないビジネスを手に入れてしまった……。今までで最悪の取引は〈デクスター〉だよ」
資源がないゆえに育った
日本の大手商社の実力
日本投資はわかりやすかった。
相当な実力を備える会社が五つあって、
どれも理解の範囲内に存在していて、
適正な配当を払っていて、自社株を買い戻していた。
しかも、購買の資金を調達する際、
円建ての社債を発行することで、
〈バークシャー〉は為替リスクを管理することができた
2021年、ウォーレンは67億ドル相当の円を注ぎ込み、日本の大手“総合商社”5社の株を購入した。〈三井物産〉と〈三菱商事〉と〈伊藤忠商事〉と〈丸紅〉と〈住友商事〉だ。
日本は島国で天然資源がないため、製造業や日常生活に必要な原材料の多くは、100パーセント輸入に頼るしかない。具体的には、綿花、原油、天然ガス、鉄鋼、鉱物、牛肉。海外製の消費生活用製品と工業製品も数多く含まれる。日本の商社は原材料や製品の輸入を、独自の海外支社網と、世界各地の取引相手を使って円滑化している。反対に、日本製品を世界へ向けて輸出するのも彼らの仕事だ。
収益の成長と自社株買いに関して、上記の5社は長い歴史を持っている。しかし、実際に投資先としての魅力を高めたのは、全社が2パーセントほどの配当を支払っている点だった。