最大のリスクファクター、それは「遺伝」です。血縁のある家族に前立腺がんの患者がいる場合、発症リスクは通常の2.4~5.6倍になるとも言われており、特に家族に2人以上の患者がいる場合は5~11倍に跳ね上がるという報告もあります。これは生活習慣では避けられない要因ですが、だからこそリスクを理解したうえで早期発見の体制を整えておく必要があります。PSA検診を受けるかどうかの判断にも、この遺伝要素は大きく関係してくるでしょう。

もしがんの疑いがあったら?

 では、実際に前立腺がんの疑いがあるとされた場合、どのような検査が行われるのか。もっとも基本的なものが直腸診です。お尻から指を入れて前立腺を直接触診する方法で、硬さや腫れなどを確認します。加えて、CTやMRIなどの画像検査で内部の状態を調べることもあり、必要であれば針を刺して組織を取り出し、がんかどうかを調べる生検が行われます。痛み止めが使われるため過剰に心配する必要はありません。

 治療法としては、放射線治療やホルモン療法、手術などがあり、中でも近年注目されているのがロボット支援手術、いわゆる「ダヴィンチ手術」です。医師がモニター越しにロボットアームを操作して行うもので、傷口が小さく出血量も少ないというメリットがあります。

「治る可能性のあるがん」

 前立腺がんの5年生存率は非常に高く、がんの中でも「治る可能性のあるがん」として位置づけられています。しかし、がんが遠隔転移した場合はその生存率が大きく下がってしまうため、やはり早期発見が鍵となるのは間違いありません。ちなみに、前立腺がんの特徴として、骨への転移が起こりやすいことが知られており、特に腰椎に転移した場合、腰痛として症状が現れることもあります。腰の痛みが続くとき、前述のような他の症状――夜間頻尿や排尿困難、血尿など――が重なる場合には、念のため前立腺の異常も疑っておくべきでしょう。

 このように、前立腺がんにはさまざまなリスク要因が存在し、すべてを完全に避けることはできないにしても、少なくとも自分の体に対する理解と選択肢を持っておくことは可能です。大事なのは、むやみに怖がることでも、何もせずに無視することでもなく、正しい知識をもって自分の健康を主体的に守っていく姿勢です。

 特に55歳を過ぎた男性にとっては、PSA検診を受けるかどうかを一度立ち止まって考えてみる価値があるでしょう。前立腺がんは「静かに進行するがん」であるからこそ、その存在を知り、備えることこそが最大の予防になるのです。

(本原稿は、森勇磨著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を一部抜粋・加筆したものです)

【訂正】記事初出時より以下のように修正します。
タイトル:がんリスク20%!?→がんリスク20%減!?
(2025年8月29日16:20 書籍オンライン編集部)