しかも、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの慢性疾患を診ている場合には、熱心に患者と話して食事や運動の指導をしても、特に何もしなくても、医学管理料というものが請求できる仕組みだ。

患者の不安を煽る医者ほど
評判がよくなってしまう

 そして、診療所や病院の大きな収入源になっているのが、健康診断、人間ドック、がん検診などだ。

 何年か前、地域の医師会の役員をしていたときに、自治体の胃がん検診の医療機関別の陽性率をチェックしたことがある。がん検診は健康な人を対象にしているので、胃のX線検査で陽性になる人は100人に1人もいないくらい少ない。

 ところが、ある診療所では胃がん検診として胃のX線検査を受けた人の90%が「がんの疑いあり。要精密検査」との結果になった。明らかにおかしいし、チェックをした医師全員がおかしいと思っているが、そういう医師に警告を出したり告発したりする仕組みがないので誰も手がつけられない。

 同じ診療所で精密検査をやって儲けているのではないかと思っても、「患者のためにも、疑わしい所見があったら精密検査が必要」と言われたら反論は難しい。

 健康な人が対象のがん検診は、公的医療保険が適用にならないが、「がんの疑い」で精密検査になったときには保険が利く。

 ほとんどの患者を精密検査に回す診療所は、「あそこの胃がん検診に行ったら、ほとんどの人が保険診療で胃の内視鏡検査が受けられる」と地元の患者の評判が良好だったのだから始末に悪い。

 問題のある医師や歯科医師の免許を停止したり取り消したりしたりできる「医道審議会」はあるが、わいせつ行為や住居侵入・窃盗、麻薬取締法違反など違法行為があったときに行政処分の対象になるだけだ。医療行為の内容によって医師免許が停止になったり取り消されたりすることはない。

 例えば、医療行為自体に問題がある診療所や病院に行政指導が入るためには、裏付けになるようなデータがなければならないが、日本ではそんなものは存在しないから野放しだ。