メンタルを病む人が年々増加しています。そんななか、精神科医の和田秀樹氏は精神医療の「崩壊」が起こっていると警鐘を鳴らしています。和田氏の著書『「精神医療」崩壊 メンタルの不調が心療内科・精神科で良くならない理由』(青春出版社)から、日本の精神医療が抱える問題点を紹介します。
「精神療法」の専門医が教授トップになりにくいワケ
今、日本の精神医療は崩壊の危機に瀕しています。原因は1つではなく、いくつもの要因が絡み合って起こっているのですが、最大のトリガーとなっているのが、「心を診る医者」の不足です。
日本には医学部をもつ大学が82校あります。現在、その精神科の医局の約9割で、薬物療法を中心に行う医者が主任教授(教授のトップ)になっていて、患者さんの心の診療に欠かせないカウンセリングなどを重視する“精神療法”を専門としている医者は、大学医学部にはわずかしかいません。
教授というのは、教授選で決まりますが、少なくとも過去40年において、不戦敗を含め、精神療法に力を入れている医者は「教授選82連敗」というのが実情です。精神療法を行っている医者は、教授選に勝てないのです。
ここで問題なのは、誰が教授(とくに主任教授)になるかによって、医局(大学医学部とその附属病院の各診療科に存在する教授を頂点とした組織)の診療方針や、大学の教育内容が変わってしまうところです。