解剖してみると、大動脈が2層に裂ける「大動脈解離」によって、心臓の周りに出血を生じさせた「心タンポナーデ」で急死したことが判明。

 つまり、どこからか入手した女性の下着を使って自慰行為を行なっている最中に、血圧が上昇して死亡してしまったのです。自慰行為というのも命がけの作業なのだと、つくづく思ったものでした。

「孤立死」と「孤独死」
近いようで遠い死の形

「孤立死」と「孤独死」。どちらも同じ意味だと誤解されがちですが、孤立死は生前から家族や周囲の人たちと関わらず、社会から孤立した状態で亡くなることを指し、孤独死はあくまでも亡くなった環境が1人の場合に用いられる言葉として使い分けるのが正解のようです。

 誰にも看取られずに死ぬという意味では同じですが、家族や周囲の人たちとの生前の関わり方の違いによって、区別されています。

 近年では、日本各地で発生している災害による、孤独死の増加が懸念されています。東日本大震災から13年となる2024年3月までの統計では、岩手、宮城、福島の東北3県の災害公営住宅における孤独死は553人。その多くが高齢者です。

 これは、災害を契機に慣れ親しんだ地元を離れたことで、周囲とのコミュニケーションが不足し、孤立する人が増えたことが一因となっています。つまり、このケースは孤立死とも言い換えることができるでしょう。

 孤独死は、自宅で亡くなってから発見されます。

 発見が遅れて腐敗が進行しているケースも多く、外表からは死因や身元を判断することが難しいため、解剖となる率が高いのが特徴です。

 孤独死が発覚するきっかけの多くは、郵便ポストに新聞やチラシ、郵便物が溜まっているのを周りの人が気づくことです。さらに、その家から腐敗臭がすれば、隣人や近隣の住民から通報が入ります。また、遠方に住んでいるご家族が、「連絡が取れなくなった」と通報する事例もあります。

 そして通報を受けた警察が、大量のハエが飛び交う室内で死亡している人を発見することになるのです。