「孤独死はかわいそう」と
決めつけるのは考えもの

「孤独死」という言葉には、社会と疎遠になり寂しい最期を迎えたような悲壮感がただよっていますが、そもそも生物学的に、ほとんどの動物は死ぬときは単独。「孤立死」となると思うところはあるものの、生前少しでも人とのつながりがあったのなら、必要以上に「かわいそうな人」と憐れむ必要はないかもしれません。

 それに、法医学者として多くの現場を見てきた経験上、孤独死によって気の毒なことになるのは本人や親族だけではなく、ご遺体があった部屋の清掃を行なう業者、事故物件となった不動産の所有者、身元確認のために尽力することになる警察も含まれるような気がします。

 ちなみに、以前、私の友人がアルバイトで孤独死があった後の室内を清掃することになり、「腐敗臭が強い場合はどうすればいいのか」と尋ねられました。

「線香は消臭の効果があるよ」と伝えたところ、どう聞き間違えたのか「清掃後に線香をあげて供養した」との報告が……。

 残念ながら私は、清掃中の腐敗臭対策には貢献できなかったようです。