
とくに自分から希望したわけではない業務に「あなたがやりたがっていた件だから…」とオファーされる。あるいは、レストランで別の料理を注文したはずなのに、注文した覚えのないシェフのお勧め料理のオーダーが入ってしまっている。こうしたスレ違いは職場でも日常生活でもしょっちゅう起きるが、その背後には「記憶にはその人の欲求が絡みがちである」という心理メカニズムが働いている。(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)
※本記事は『なぜあの人は同じミスを何度もするのか』(日経プレミアシリーズ)から抜粋・再編集したものです。
店員の勘違いはどこから生まれたか
記憶のスレ違いによって気まずい雰囲気になったり、誤解が生じたりと、ややこしいことになりがちだが、その背後にある心理メカニズムを踏まえておけば、あまりムキにならずにやり過ごすこともできるはずだ。
いくつか具体的な事例を見てみよう。
あるとき買い物に行った店の店頭で、お客が店員に向かって怒鳴るような調子で文句を言っていた。何気なく聞いていると、そのお客が電話で問い合わせた商品を買いに来たのだ
が、すでに売れてしまい、揉めているようだった。
お客の方は、
「買いに行くから取っておいてくれと言ったはずだ」
と真っ赤な顔でまくし立てている。取っておくように頼んでから、わざわざ買いに来たのに、ないとは何ごとだ、と怒っているのだ。