
「読み書きは学校で教えてもらうもの」と思っている親世代は多いだろう。しかし、子どもには教えなくても元から備わっている“ある学習能力”があることが研究を通して明らかになった。赤ちゃん研究者で二児の母でもある著者が、赤ちゃんに元から備わっている学びの能力を解説する。※本稿は、奥村優子『赤ちゃんは世界をどう学んでいくのか ヒトに備わる驚くべき能力』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。
5歳児の7割が小学校入学前に
ひらがなの読みを習得している
言語を習得する過程は、まず「聞く」ことから始まります。赤ちゃんは胎児期から親や周囲の人の声をたくさん聞き、やがて「話す」ようになります。その次のステップで「読む」ことを学び、最終的に「書く」能力を身につけます。
昔から「読み書き算盤」という言葉があるように、文字を読むことや書くことは、教科を学ぶ基盤となる重要な能力です。ひらがなの読み書きに関する体系的な教育は小学校入学後に始まりますが、日本のように識字率の高い社会では、子どもは就学前から文字の存在を意識しています。実際、個人差はありますが、多くの子どもは小学校入学前にひらがなの読みを習得しています。
1988年と少し古いデータですが、保育園や幼稚園に通う3~5歳の子ども1202名を対象にした、ひらがなの読解能力に関する調査を紹介します。ひらがなには、清音・濁音・半濁音・撥音(「ん」)を含めて71文字あり、そのうち何文字を読めるかが調べられました。
その結果、3歳児の半数以上はほとんどひらがなを読めていませんが、5歳児になると約70%の子どもが71文字すべてのひらがなを読めていることがわかりました。