横に並んで座る子どもたち写真はイメージです Photo:PIXTA

子どもが言うことを聞かないとき、サンタやオバケなどの「見えない存在」の名前を出したことはないだろうか。子どもたちはなぜ実際に会ったこともない存在を信じて良い行動を取ろうとするのだろうか。心理学的に解明されている“子どもの行動”を知ることで本当にかけるべき言葉が見つかる。※本稿は、奥村優子『赤ちゃんは世界をどう学んでいくのか ヒトに備わる驚くべき能力』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。

“褒められるため”じゃない
赤ちゃんの純粋な思いやり

 成長とともに、子どもは状況に応じて道徳的な行動をとるようになります。その一例が、評判を意識して、他者に見られているときに良い評価を得ようとする行動です。

 大人でも、1人でいるときよりも、誰かに見られている場面では、良く見られたいと考えて行動を変えることがあると思います。他者から良い評価を得ることは、それが広まり、最終的に自分への良い影響につながります。

 たとえば、職場で他人から評価されるような行動をとることで、その評判が周囲に広まり、結果として昇進や仕事の機会につながることがあります。

 自分の評判を意識して行動を調整することを評判操作といいます。見られている状況では、私たちは評判を気にして、それを維持しようと強く動機づけられるのです。

 一方で、先に紹介した幼い子どもの援助行動は、評判を得ることが目的ではなく、純粋な動機によるものとされています。2歳児を対象にした研究では、親に見られている場合と見られていない場合で、援助行動の頻度に差がないことがわかっています(注1)。

注1  Warneken, F., & Tomasello, M. (2013). Parental presence and encouragement do not influence helping in young children. Infancy, 18, 345-368.