ひらがなの音と文字を
理解するまでの段階とは

 さて、実験結果に話を戻しましょう。80名のデータを月齢に基づき、低年齢群(平均2歳4カ月)、中年齢群(平均2歳11カ月)、高年齢群(平均3歳10カ月)の3群に分けました。

 視線の動きを解析した結果、中年齢群と高年齢群では、提示された音に対応するひらがな文字を注視していました。「しー、しはどっち?」という音声を聞くと、「し」の文字を長く見ていたのです。一方、低年齢群では、音に対応するひらがな文字を長く注視する傾向はみられませんでした。同じ音声を聞いても、特に「し」の文字に注目することはありませんでした。

 さらに、この視線計測の実験後、実験で使用した14文字について、実際に読みを口頭で答えられるかを調べました。低年齢群ではひらがなをほとんど読めず、中年齢群でも同様の結果が得られました。一方、高年齢群では個人差があるものの、一部の子どもがひらがなを読み始めている様子がみられました。

 これらの結果から、3歳前後の中年齢群の子どもは、ひらがなを明示的に読めなくても、音と文字の対応を理解し始めており、ひらがな文字音知識を持っている可能性が示唆されました。

 つまり、子どもがひらがなを読めなくても、すでに理解している段階があることが明らかになったのです。