
優待利回り50%超の“大盤振る舞い”な株主優待が反響を呼んだ地域新聞社。ただ、時価総額は東証グロース市場の上場維持基準を下回り、「上場廃止」の可能性もある崖っぷちの状況だ。同社の細谷佳津年社長は「時価総額100億円突破を見据えている」と強気だが、株主優待以外に秘策があるのか? 地域新聞社・細谷佳津年社長インタビューの【後編】をお届け!(市川森彦、ダイヤモンド・ザイ編集部)
時価総額8億円台から急上昇中
上場廃止危機を脱出できるか?
――地域新聞社は、東証グロース市場への上場を維持するために、2026年8月末までに時価総額40億円を達成する必要があります。「フリーペーパーの会社」と聞くと、成長性がイメージできない人も多いと思いますが。
「フリーペーパー」と聞くと、いかにも儲からなさそうと思われる方も多いでしょうね。しかし当社のビジネスには、他社にはない圧倒的な強みと成長のポテンシャルがあります。
ビジネスモデルは非常にシンプルです。地域の企業や店舗から広告をいただき、その広告収入を基に紙面を制作し、地域住民の皆様にプロモーションを行います。
最大の強みは「手配り」の配布網です。当社は毎週174万部を千葉県と茨城県の一部のご家庭に手配りで届けています(2025年6月末時点)。しかも新聞を購読していない家庭や、スマホを持っていない高齢者にも直接リーチできます。非常に稀有で強力な媒体なのです。

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この独自の配布網、5拠点に広がる営業網、130名に及ぶ地域ライターや内製化した編集・制作力、約6万人の読者データといった、かけがえのない資産を当社は持っています。これを活かしてさまざまな分野の企業との提携を進めれば、大きく成長することは可能です。
――東証は、グロース市場の上場維持基準を2030年までに「上場から5年で株式時価総額100億円」とする方針です。地域新聞社は、この基準もクリアできますか。
時価総額40億円は通過点に過ぎません。もちろん、私たちの目標はその先にあります。2030年までに時価総額100億円を超えることは、十分に可能だと思っています。
社内の空気も大きく変わりました。当社が上場企業であることすら知らない社員が過半数という状況でしたが、社員が時価総額向上に一丸となって取り組んでいます。従業員の持ち株会に加入する社員の数が倍に増えるなど、社員自身が株主となって当事者意識を持ち、会社を成長させようという機運が高まっています。
実際に、7月に入って株価も大きく上昇しました。2024年2月の時点では東証グロース市場で時価総額最下位の8億円だった当社が、一時は時価総額34億円にまで到達しました。決して単発の要因ではなく、これまでのさまざまな取り組みが複合的に評価された結果だと認識しています。