彼は自分が一度掲げた目標は、決してスマートではない彼独特の泥臭いやり方であったにせよ、すべてあきらめることなく達成していたのだ。

受験で培った能力は
社会に出てからも役立つ

 私はかつて週刊現代のインタビューを受け、京大生は仕事をやめがちな傾向にある、エリートと無気力マンに二極化していると語ったことがあるが、野々宮はもう少し複雑な存在で、無気力マンを仮構したエリートだった。

 私なりに分析すると、京大生の中で社会的成功をおさめるタイプとダメなタイプの違いとして、受験勉強の方法をそのままスライドさせて就活や仕事、コミュニケーションに応用できるかどうかという点があると思う(もちろんハナから成功する気がないタイプもたくさんいるのだが)。

 野々宮は受験で培った方法論を、それ以降の人生のフェイズでも使い続けて成功したのだ。

 それは就活までだけの話ではない。野々宮の職業上、私は現在の彼の仕事ぶりの一部を見ることができるのだが、あの低レベルな小論文を書いていた、麻雀の雀の字も書けなかった野々宮はもういない。

 彼は虎の子の「20時間勉強法」を用いて、自らに必要な能力を徹底的に鍛え抜いたのだ。

 エリートになりたいのに失敗する京大生や有名大生の多くは、おそらく潜在的なプライドの高さに邪魔されている。受験勉強はコツさえ掴めば筋トレのようなもので、さほど恥をかくことなく勝手に能力を伸ばしていける。

 しかしその後の人生の段階において一定のレベルを超越するためには、よほど元々の能力が高くない限り、プライドを捨てて恥をかくことが要求される。そこで躓かずにやれるかどうかが、結果を分ける大きなポイントになってくるのだ。

会社はすぐやめたけれど
小説だけは続いた理由

 さて、読者の方々の中には「で、そんなことを偉そうに書いているお前はどうなんだ?」と思われている人もいることだろう。