私はもちろん、野々宮のようにはなれなかった。私は新卒で入った大企業を1年でやめた人間なのだ。つまり、受験の方法を会社員として応用することができなかったのである。

書影『学歴狂の詩』学歴狂の詩』(佐川恭一、集英社)

 だが、作家業は公募時代から数えるともう18年続いている。それはなぜかと言えば――あくまでも私の考えでは、ということだが――作家の仕事はほとんど受験と同じだからだ。基本的には1人でできる作業が主であり、さほど恥をかくこともなく勝手に上達していくことが可能なのだから、これはほぼ受験そのものなのだと言っても過言ではない。

 この私の戯れ言を聞いて「もしかしたら自分は小説に向いているかもしれない」と思った悩める受験専用ファイターのあなたは、ぜひ1本でもいいから小説を書いてみてほしい。

 世に出る出ないは別として、その行為自体に救いを見出すことができるかもしれない。