
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。
複雑な経済環境下で重要性増すガバナンス
多くのファミリービジネスは、規模や上場非上場を問わず特徴を生かした力強い企業活動を行っており、まさに日本経済を支える存在として独自の強みを持つ。一方で、ガバナンス面で固有の課題を抱えていることは、本連載で見てきたとおりである。
ファミリーガバナンスは、ファミリーとビジネスの両方を調和させ、長期的な視点で経営を支える枠組みを構築することである。これにより、ファミリーの価値観やビジョンが企業の成長と発展に反映され、ファミリーの紛争を未然に防ぐことができる。また、そうして円滑な意思決定を実現することで、ファミリービジネスの課題を抑制し、強みを生かした持続的な経営が可能となる。
近年、企業経営においては新たな課題が次々と浮上し、大きな転換点にある。多くの環境変化、例えば少子高齢化の進行、AI(人工知能)などテクノロジーの急速な発展、ゲームチェンジといわれる資本市場改革やコーポレートガバナンス改革、インフレ加速、地政学リスクの高まり――は複雑に絡み合っている。その中で、経営の持続可能性や成長に向けた取り組みが喫緊の課題となっている。
複雑な環境下では、経営者は近視眼的になることなく大局的な視点で、迅速に意思決定をしていくことが重要だ。ファミリービジネスはこの点で優れた企業体である。だからこそ、ファミリービジネスの強みとファミリーガバナンスの重要性が注目を集めているのではないだろうか。