一生懸命に考えたのに、思ったように伝わらない」「焦りと不安から自分でも何を話しているかわからなくなってしまう」…。言っていることは同じなのに、伝え方ひとつで「なんでこんなに差がつくんだろうと自信を失ったとき、どうすればいいのでしょうか?
コンサルタントとして活躍し、ベストセラー著者でもある田中耕比古氏の著書『コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』から、優秀なコンサルが実践する「誰にでもできるコミュニケーション術」を本記事で紹介します。

頭のいい人が「逆算」で考えるときにやっている、たった1つのこととは?Photo: Adobe Stock

ゴールに向けたストーリーを設計する

 将来について語りたいときに必要なのが「ゴールに向かう道筋」に注目するストーリー設計です。

 向かうべきゴールが決まっていて、そこから逆算して道筋を描くため、「逆算テンプレ」と呼びます。

「逆算テンプレ」は、次の4ステップで進めます。

 ステップ①:ゴール(到達したい状態)を明確にする
 ステップ②:ゴールを達成するための条件を洗い出す
 ステップ③:条件を満たすためのキーファクターを探す
 ステップ④:そのために、どういう順番で、何をすべきかを定義する

 ステップ①:ゴールの明確化

 最初に、到達したい状態を明らかにします。先ほどの「Before→Afterテンプレ」のAfterの状態と同様に考えてください。どんなふうになっていれば理想の状態(ゴール)なのかを考えます。

 ここでは、「今月中に予算を達成する」と、「半年後に『週3回走る』を習慣化する」をゴールに置いておきましょう。

 ポイントは「期限」の概念を設定することです。

 ステップ②:達成条件の洗い出し

 次は、ゴールを達成するための条件を洗い出します。

 例えば、予算の達成は、受注件数、平均単価、などの要素に分解できます。目標まであと500万円だとすると、平均受注単価が100万円の場合は、5件の契約が必要です。

 ゴールが「半年後に『週3回走る』を習慣化する」ならば、いつ走るのか、どこを走るのか、が決まっていないと目標を達成できません。

 ステップ③:キーファクターの見極め

 続いては、その条件を満たすためのキーファクター(鍵となる要因)の見極めです。

 ゴールの達成条件となる「5件の契約」を取るためには、何社のアポイントが必要か。また、1件の契約を取るためには、通常どれくらいの時間がかかるのか。

「週3回走る」については、走る時間の確保、モチベーションの維持などがキーファクターとなります。朝と夕方ではどちらの時間を確保するほうが容易か。

 曜日を固定したほうがいいのか、固定しないほうがいいのか。雨の日にはどうするのか……などもキーファクターとなるでしょう。

 こうしたキーファクターは、「決められた期限内にゴールにたどり着く」という計画が、現実的に達成可能かどうかを判断する基準になります。

 ステップ④:道筋の明確化

 最後に、「キーファクターをどのようにコントロールしていくのか」を活動計画に落とし込みます。つまり「何をすべきか」に注目して言語化するわけです。

 5件の契約を取るために「20社のアポイント」が必要ならば、最低でも20社のリストをつくらなければいけません。

 また、最初に打ち合わせしてから受注までの期間として1週間必要ならば、期限である今月末の「1週間前」までに、すべてのターゲット顧客と、最低一度は話していなければなりません。

 そうすると、

・今週(第1週)の前半に20社のリストをつくる
・今週後半にコンタクトをとって、来週・再来週でのアポ入れを行う
・打ち合わせを入れられなかった企業の分は、追加リストを作成して、再度、アポ入れに挑戦
・来週末(2週目終了)の時点で、受注見込み数と残りアポ数を見て、足りない場合は、追加アクションを検討するとともに、上司にアラートを上げる

 などの計画に落とし込まれます。

「週3回走る」の話であれば、「飲み会の頻度を抑える」とか、「ジョギングウェアやシューズの購入」「トレーニングジムの契約(雨天対策)」などを実行計画に組み込みます。

 また「最初に走るのはいつか」「アプリを使って記録する」「SNSに投稿してやる気を維持する」などの打ち手(解決策)も組み込んでいきます。

 このように「目的地に向かう道筋」を言語化すると、「何に向かって、何をするのか」を語ることができるようになります。

「どうなっていくのか」を他人任せ、自然の成り行き任せに整理するのではなく、「どうすれば、そうなれるか」という自分の意思を込めた計画、血の通った計画にすることにより、実行可能性の高いストーリーを描くことができるのです。

(本記事は『コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』の一部を抜粋・編集したものです)