『ぐりとぐら』の元になった
グリ、グル、グラ

 さて、女の子は何でも喜ぶんですけれど、男の子の喜ぶお話というのは、難しいのです。

 どうしようかと考えているときに、「プフ・エ・ノワロ」という絵本のシリーズに出合いました。私のフランス語の先生のところにあったのです。フランス語で「しろちゃんとくろちゃん」という意味ね。

 そのうちの1冊の“Pouf et Noiraud campeurs”は白い猫と黒い猫が近代的なキャンプ用品一式を持ってキャンプに行くお話で、それがまた素敵に面白いのです。本来はハードカバーの大型の美しい絵本でしたのに、その後ペーパーバックで出版されて、いま私の手元にあるのは、丸善で見つけたものです。

 これを紙芝居にしたら、男の子たちに大受けでした。猫のキャンプのテントが珍しくて集まってきたねずみがグリ、グル、グラと騒ぐ場面になると、大合唱。

 毎日毎日、『ちびくろ・さんぼ』の紙芝居をやって、次はグリ、グル、グラと大騒ぎでした。

 ある日、天谷先生が、おうちからフライパンと小麦粉、卵などホットケーキの材料を一揃い保育園に運んできました。そして、子どもたちの前で、ホットケーキを焼いてご馳走してくださったのです。初めてホットケーキを見た子もいただろうと思います。皆大喜びでした。

 次の日、お母さんたちからもお礼を言われて。家に帰って「とってもおいしかった」と報告したのでしょうね。それで私は「よし、子どもたちにもっとすごいプレゼントをしよう」と決心して、大きなカステラが出てくる「たまご」というお話をつくりました。

 このときのことと「プフ・エ・ノワロ」のグリ、グル、グラ、という音の響きがのちのち、『ぐりとぐら』の絵本の元になりました。

憧れのいぬいとみこさんに
コンタクトを取ってみたら…

 保母学院(編集部注/中川さんが通っていた保母の養成学校。都立高等保母学院)の頃、朝日新聞に「女性のグループ訪問」という記事が載りました。童話の同人誌グループ「いたどり」が紹介されていて、リーダー格のいぬいとみこさんが岩波書店で少年文庫に携わっている、と記されていたのです。