『くじらぐも』が国語の教科書に載り続けるワケ、作品に込められた“本当のメッセージ”とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

「ぐりとぐら」シリーズなどで知られる、児童文学作家の中川李枝子さん。都立高等保母学院を卒業してすぐに「みどり保育園」に就職した中川さんは、子どもたちへのプレゼントのつもりで「お話」を作っていたという。しかし、そんな彼女が“唯一の例外”と呼ぶ本が『くじらぐも』だ。そこに込められた想いと、天才作曲家・加藤旭との思い出について紹介しよう。※本稿は、中川李枝子『本と子どもが教えてくれたこと』(平凡社)の一部を抜粋・編集したものです。

ケンカして公園で遊んで…
全力投球の子どもたち

 感情的にならずに話せば、子どもはわかるものなのよ。子どもだから、お友だちが好きで飛びついたのが喧嘩の元になったりなんていう誤解も、よくあることでした。だから双方の言い分をしっかり聞くんです。聞いているうちに言い分がだんだんとおかしくなっていって、最後はあまりにもおかしくて皆で笑っちゃうの。喧嘩は保育園の花でした。

 子どもは全力投球、エネルギーを使うのは午前中です。午後はおまけ。だから、ひとつのことを一所懸命するのは午前中で、午後から夕方までぐだぐだしていていいんです。

 子どもは外が大好き。よく公園に連れていきました。自然があれば、カリキュラムなんて改めてつくる必要はないのよね。今日の空を見るだけでも、わかることがいっぱいあって、つまりは学校の1年分のカリキュラムをやることと同じなんです。

 特に、駒沢は自然が豊かだったから、保育環境に恵まれていました。

 私は散歩で外に出るときは、できれば二丁拳銃を持っていたいほど用心していました。大切な子どもたちを預かっているのですから、不審者はいないか危険物はないか、まわりを確かめ、しょっちゅう子どもの頭を数えていました。