長時間労働は
やっぱり見直した方がいい

 バービーは、夫に対して不満をぶつけるよりも、社会構造へ目を向ける方が生産的だと考えているのだと感じた。人の働き方は勤務先の会社、引いては社会の構造によって決められているのであり、そこに無理が生じた場合、個人や個々の家庭の努力・工夫だけで乗り切ろうとするのには限界がある。

 男性の働き方は時間に融通が利きづらいと思われていて、逆に「女性はフレキシブルに働けるでしょ?」と考えられがちだというのも鋭い。現代の社会にはまだ「家事・育児は女性が担当した方がいい」という暗黙の了解のようなものがあり、女性自身もその性的役割を内面化しているため、例えば子どもが熱を出した場合などは、女性が勤務先に頭を下げて帰る、ということが往々にしてある。

 男性が同じことをやろうとした場合、「奥さんは何してるの?」と言われることもある。染みついた性的役割分担ゆえに、「家事育児のために男性は休めない」「女性は休める」風潮が再生産されていく。

 これを打開するためにはそもそももっとゆとりのある働き方が必要なのだという意見は芯をついているし、子育て中の家庭の働き方を考える上で、結局行き着くところはそこである。「女性の社会進出」ではなく「男性の家庭進出」が必要だということはかねてより言われており、そのためには、社会の意識変化が不可欠だ。

 そして長時間労働を見直そうという動きはすでにあり、通勤時間削減のためのリモートワーク推奨や、週休3日制の部分的導入、残業削減の取り組み、成果主義評価の強化などが行われている。無駄な会議の見直しが必要であることや、大人数が出席する会議の非効率性なども以前から言われている。

 今のままの働き方でも仕方ないと考えるか。より良い働き方や、働き方の多様化のために知恵を絞ろうと考えるか。後者の方が前向きではある。

 バービーは決して、週5日フルタイムで働く労働者を小バカにしたわけではない。その労働者を雇う立場の人に向けての言葉だとわかりやすく示せば、批判の声は少なかっただろうか。