一生懸命に考えたのに、思ったように伝わらない」「焦りと不安から自分でも何を話しているかわからなくなってしまう」…。言っていることは同じなのに、伝え方ひとつで「なんでこんなに差がつくんだろうと自信を失ったとき、どうすればいいのでしょうか?
コンサルタントとして活躍し、ベストセラー著者でもある田中耕比古氏の著書『コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』から、優秀なコンサルが実践する「誰にでもできるコミュニケーション術」を本記事で紹介します。

「ただ考える」のは三流。「フレームワークで整理する」のは二流。では、一流の人はどう考える?Photo: Adobe Stock

一流は「相手に伝わる言葉」へ言語化する

 コンサルタントというと「フレームワーク」が大好きだと思われがちです。

 実際、嫌いではありませんし、確かに頻繁に使うのですが、それに頼り切っているわけでもありません。

 フレームワークと聞くと、あなたは何を思い浮かべるでしょうか。

 3Cとか、4Pとか、5フォースとか、7Sとか、SWOT分析アンゾフのマトリックスロジックツリーピラミッドストラクチャー……。

 数え上げればきりがありません。これらのフレームワークを、コンサルタントが資料づくりなどに活かしているのは事実です。

 しかしながら、フレームワークをたくさん覚えているからといって、それだけでは優秀なコンサルタントとはいえません。

 むしろ、フレームワークに当てはめた資料をつくり「整理しました」と持ってきただけでは、相手から「で、結局、どうしたいの?」「何が言いたかったの?」という冷ややかな反応が返ってきてしまいます。

 説明している本人は、ロジックも整理され、きれいに図解されているし、申し分のない出来栄えだと思っているかもしれません。

 しかし、説明を受けた側からすると、結論もわからなければ、納得感もない。

 これは、よくある“伝えたつもり”の状態です。

フレームワークは「言語化の準備」に過ぎない

 フレームワークは、文字通り思考を整理する「枠組み」です。

 複雑な情報をうまく分解していったり、抜け漏れなく全体を俯瞰したりするためにとても有効なツールです。

 自社を取り巻く環境を、自社(Company)、競合(Competitor)、顧客(Customer)の三つのCでとらえる「3C」を用いて分析する。

 自社の状況を、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の四つに分解する「SWOT」の考え方で分析する。

 自分たちの売り物を、商品(Product)、価格(Price)、流通経路(Place)、販促(Promotion)の四つのPに分解してとらえる「4P」分析。

 こうした考え方そのものは、非常に有効なのですが、それだけでは「整理しただけ」に終わります。

 喩えるなら、小学生が教室では「五十音順」で座り、体育の時間は「背の順」に並ぶのと同じです。単に「一定のルールにのっとって並べた」というだけで、それ以上の意味はありません。

 では、なぜフレームワークで整理するのか。

 それは「整理によって見出したものを、言語化するため」です。フレームワークで整理するのは、言語化の準備に過ぎないのです。

 フレームワークを埋めていく作業。それは「頭の中にあるものを、吐き出していく」行為です。あれこれ考えていることを、一定の枠組みにはめ込んで整理していく作業といえます。

 しかし、大切なのは、整理したことで得た気づきを、他人に伝えられるように言語化することです。そうしなければ、単なる自己満足で終わってしまいます。

 言語化は、考えた内容が、相手に狙い通りに伝わるように「表現し直す」技術です。

 どれだけ一所懸命に、時間をかけて考えたとしても、それを「伝わる言葉」に変換できなければ、仕事は前に進まず、物事は動きません。

(本記事は『コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』の一部を抜粋・編集したものです)