加藤は荒れている荒谷二中から、金八先生の桜中学にやってきた問題児であり、最初は先生の話を聞こうともせず、他の生徒と問題を起こしてばかりだった。

 しかしそんな加藤に対しても、主人公の金八先生は真摯に対応する。不良の溜まり場に行って、加藤を庇う暴走族関係者2人も交えて、4人で話をする。

「金八先生」vs.「現暴走族リーダー&元暴走族リーダー&加藤」という構図で、一触即発の展開であるが、金八先生はビビりながらもしっかり話をしていく。

 最初は荒々しい空気だったが、途中で金八先生が「腹減ってしまったから、飯を作らせてもらえないか」と言い出し、焼きそばを作ってみんなで食べたあたりから、割と向こうも心中を話してくれるようになる。

教育を受ける側の権利を熱く説く
区別された側が抱く不公平感とは

 金八先生は「義務と権利」の話をする。加藤は「学校に行かなければならない義務があるなんて、人権侵害だ」と言うが、それに対して金八先生は強い口調でこう言う。

「加藤、お前は、教育を受けることができる権利がある。義務じゃない。だから授業がわからなかったら、『わからないから教えてください』と言う権利があり、それに学校・先生は答えなければならない。だが授業にも来ないのに『わからない』『ついていけない』というのは筋が通らないだろう」と。

 この加藤への金八先生の対応は、体当たりという他ない。不良である加藤に多少ビビりながらも、不器用でもきちんと話をしていく様子が描かれている。このような熱い先生像というのが、1980年代ではずっと続いていくことになる。

 それに対して、加藤の先輩だという元暴走族のリーダーである岸本という人物がこんな話をする。

「一体人間ね、生徒を成績だけで区別できるもんなのかね。先公は、平気でこっちのことを区別しやがる。で、先生ってのは、頭がいいやつがなるだろ。だから、勉強ができないやつのことがわかんないんじゃないか。だから平気でこっちの傷つくことを言いやがる。その上タチが悪いのは、先公は権力を持っていやがる。生意気だったら停学だ、3回喫煙したら退学だって言ってくる。退学って言ったら一生モノの話だよ?横暴だよ」と。