「すき家、そこまでやるか…」ネズミとゴキブリ混入からの逆転劇を生んだ“覚悟の決断”Photo:DIAMOND

2025年初頭、日本を代表する牛丼チェーンすき家で異物混入事件が発生し、社会に大きな衝撃を与えた。最初の事件に対する会社の対応は遅く、会社の信頼を大きく損なった。事件発覚から約2カ月後、会社は全く異なる対応を見せる。全国のほぼ全ての店舗を一時的に閉鎖するという、前代未聞の決断を下したのだ。一連の出来事は、現代の企業が危機にどう向き合うべきか、重要な教訓を示している。(イトモス研究所所長 小倉健一)

異物混入で急速に失われたすき家への信頼

 事件は1月21日に起きた。

 鳥取県にあるすき家鳥取南吉方店で、顧客が注文したみそ汁の中にネズミの死骸が混入しているのを発見した。顧客は自身のスマートフォンで写真を撮影し、Googleマップのレビュー欄に投稿。顧客は同時に、地元の保健所とすき家の本社にも連絡を入れた。

 連絡を受けた店舗は直ちに営業を一時停止した。2日後、店舗は保健所の現地確認を経て営業を再開した。すき家を運営するゼンショーホールディングスは、この時点で事件を公にしなかった。事件の情報は、顧客が投稿したSNSを通じて徐々に、しかし確実に拡散していった。

 ゼンショーホールディングスが沈黙を続けた期間は約2カ月に及んだ。SNS上での批判や憶測が広がり、無視できない規模になった3月22日、会社はついに公式ウェブサイトで謝罪文を発表した。

 会社はネズミ混入の事実を認め、原因は冷蔵庫のゴム製パッキンが劣化し、隙間からネズミが侵入したためだと説明した。

 ただ事件発生から公表までの長い時間は、消費者の間に大きな不信感を植え付けた。危機管理の世界では、問題が発生した際に迅速に情報を公開し、誠実な行動を示すことが信頼の毀損を最小限に抑える鍵だとされている。

 ゼンショーホールディングスの対応は、この基本的な原則から大きく逸脱していた。