ゼンショーのV字回復、どんな経営者でも手本にできる危機管理

 小さな個人経営の店であっても、問題が起きた際に正直に謝罪し、数日間店を閉めてでも原因究明と清掃を徹底する姿勢は、顧客の信頼をつなぎとめる上で同じように機能する。

 論文が示すのは、信頼回復の鍵が資金力ではなく、危機管理のテクニックでもなく、ただ消費者に対する「誠実さ」にあるという、普遍的な真理である。

 もちろん、すき家を運営するゼンショーホールディングスが巨大企業であったことは、大胆な決断を後押しした一因だろう。

 4日間の休業による、推定・約24億円の売り上げ減少は、年間売上高1兆円を超える企業体力があったからこそ耐えられた側面もある。しかし、この物語の核心は企業の規模ではない。

 最初の失敗は、規模の大小に関わらず、どんな企業でも犯しうる広報の過ちだった。そして、その後の成功は、どんな経営者でも手本にできる危機管理の原則に基づいていたのだ。

 この事例が本当に教えてくれたのは、顧客からの信頼を失うことの恐ろしさと、信頼を取り戻すための王道である。たとえ1店舗しかない小さな飲食店でも、SNSで1つのミスが拡散するリスクはすき家と何ら変わらない。

 そして、その危機に正面から向き合い、目先の利益よりも顧客の安全と安心を最優先する姿勢を示すことの重要性も、また同じである。

 すき家のV字回復劇が示すのは、企業の資金力ではなく、経営者の危機に対する覚悟と誠実さこそが、規模の大小を問わず、「お客様の信頼を取り戻す」唯一の道であるということだ。

「すき家、そこまでやるか…」ネズミとゴキブリ混入からの逆転劇を生んだ“覚悟の決断”