東京ディズニーランドに関する本はこれまでたくさん出ているが、マーケティングに特化した本は、ほとんど例がない。そんな本を世に送り出したのが、渡邊喜一郎氏。著書『ディズニー こころをつかむ9つの秘密』は大きな話題となっている。今回は、渡邊氏と新著『あたらしい働き方』が刊行されたばかりの本田直之氏との対談をお届けします。(取材・構成/上阪徹 撮影/住友一俊)

1500円で世に出して良い本じゃない!

渡邊喜一郎(ワタナベ キイチロウ)
1959年、東京生まれ。1981年、大卒/高卒の定期採用2期生として、(株)オリエンタルランド入社、マーケティング部に配属。
「年間入場者1000万人」というミッションのもと、知名度2割の状態から東京ディズニーランドのオープンに向け、知名度向上、集客、ブランディング、プライシングから旅行プランの作成まで幅広く携わる。開業後はリピーター獲得、マスコミ対応などに尽力し、2年目に1000万人を達成した。その後、開発部に異動し、オフィシャルホテル開発、ディズニーリゾート全体の開発などを手がけた。
ディズニーでのマーケティング経験を活かし、(株)日産自動車、日本電信電話株式会社、Universal Studios Entertainment、(株)トミー(現・タカラトミー)などを経て(株)アトラス取締役、(株)メディア工房取締役常務執行役員を務める。

本田 僕の最初の印象でいうと、ディズニーのマーケティングって、何か特別な、他では真似ができないような印象があったんですよね。ところが、実はけっこう応用ができる考え方があったり、これまでどこでも見たことがないやり方があったり。
 正直、もしかしたら、渡邊さんは、本の中で、とんでもないことを教えちゃってるんじゃないかと思ったんですけど(笑)。

渡邊 そうですか(笑)。

本田 こんな内容を1500円で出しちゃったのは、安すぎたんじゃないかと(笑)。それこそ、パッケージにして、セミナーも組んだりして、10倍でも聞きたい話ですよ。

渡邊 でも、本を読んでくださった方が、喜んでくださっているみたいでして。

本田 そうだと思いますよ。渡邊さんは、東京ディズニーランドができる2年前に、新卒でオリエンタルランドに入られているんですよね。

渡邊 学生時代にアメリカに20回くらい行っていましてね。そこでアメリカのディズニーランドを初体験するんです。これがもう面白くて楽しくて、行くたびに「これはどうなってるの」「あれはどういうことなの」と周囲を質問攻めにしていて。

 そうしたら、東京にディズニーランドができる、というニュースが飛び込んできたんです。場所が浦安だと聞いて、大丈夫かと思ったんですが、作る側に回ったら、毎日お金を払わなくてもディズニーランドに入れるかもしれないな、と思って(笑)。

 実は総合商社の内定をもらっていたんですが、あらゆるコネを総動員してオリエンタルランドを受けました。商社にお断りを入れるのが大変で。君の大学からは、もう採らないぞ、なんて脅かされたりもして。

本田 異端の選択ですよね。

渡邊 本当にそんなところに入って大丈夫なのか、と言う人間のほうが多かったですね。でも、親会社が三井不動産と京成電鉄なんですから。そう簡単にはつぶれるはずはない、と。