LayerXの福島良典CEOLayerXの福島良典CEO Photo by Yuhei Iwamoto

法人の支出管理SaaS「バクラク」などを手がけるLayerXが、シリーズBラウンドで150億円の資金調達を実施した。リード投資家にはNetflixやSpotifyなど世界的企業への投資実績を持つ米国の投資企業・TCVが就き、三菱UFJ銀行や三菱UFJイノベーション・パートナーズなども参加する。

「AI時代の到来」を理由に人員削減に踏み切る新興企業も話題になる中、LayerXは今回調達した資金を原資に、積極的な事業の拡大と採用拡大を宣言する。2030年度までにARR(年間経常収益)1000億円(うちAIエージェント事業で500億円)、2028年度までに従業員数1000人という野心的な目標を掲げる。福島良典CEO(最高経営責任者)に意思決定の背景や、AI時代の経営について聞いた。(ダイヤモンド・オンライン編集委員 岩本有平)

AIによる生産性向上を従業員に還元

――150億円という大型調達の狙いは。

 成長を加速させるための投資が主な目的です。具体的には、人材の育成投資とAI投資の2つに重点的に取り組んでいきます。

 まだ不確かな部分もありますが、AIの時代においては、生産性は間違いなく向上します。そんな中で、報酬制度やAIの会社への組み込み方について、リスクを取って投資する必要があると判断しました。

 具体的には、生産性の向上に応じて、既存社員を含めて報酬を最大10%アップすることを想定しています。もちろん全員が上がるという訳ではないですが、生産性向上の成果を従業員に還元していきたいと考えています。

――直近では、みずほ銀行が金融系スタートアップ・UPSIDERの株式の7割を取得してグループ傘下に置きました。LayerXの今回の調達では、既存投資家である三菱UFJイノベーション・パートナーズに加え、三菱UFJ銀行からの出資もありました。MUFGグループとの連携を強化するのでしょうか。

 少なくともLayerXは、会社法上の連結子会社と見なされませんし、銀行法上の規制を超えていません(会社法上は議決権の50%超を持つと連結子会社となる。また銀行法上、銀行やその子会社は5%超の出資規制がある)。

 他社のことには言及できませんが、LayerXがMUFGグループに期待されているのは、FinTech企業としての評価というよりは、サービスそのものやAIに関わる部分だと思います。これがMUFGグループの今後の構想と補完的なのだと思います。

――今回の調達での時価総額で、いわゆるユニコーン企業(時価総額10億ドル以上で設立10年以内の未上場企業)となったのでしょうか。