
サントリーホールディングス(HD)の新浪剛史会長(66)が1日付で辞任した。理由は、購入したサプリメントに大麻の違法な成分が含まれていた疑いがあるとして、福岡県警に家宅捜索や事情聴取を受けるなど捜査対象となっていたためだ。3日に経済同友会の代表幹事として記者会見した新浪氏は「法を犯しておらず潔白だ」と述べ、違法なサプリとは認識していなかったと強調した。(事件ジャーナリスト 戸田一法)
「会長の要職に堪えない」と
新浪氏の辞任届を受理
サントリーは全取締役と全監査役が辞任を求める方針を確認し、1日に新浪氏の「一身上の理由」とする辞任届を受理。2日の記者会見で「捜査の結果を待つまでもなく、会長の要職に堪えないと判断した」と説明した。
鳥井信宏社長は「ご心配とご迷惑をおかけし、心からお詫びいたします。業績にも影響が出る可能性もありますが、経営戦略は変わらず、信頼回復に務めます」と釈明。山田賢治副社長は、新浪氏の「会長職を続けられず、残念に思っている」とのコメントを代読した。
新浪氏は「違法との認識はなかった」と説明したとのことだが、サントリー側はサプリを取り扱う企業のトップとして、特に注意することが不可欠の資質であると指摘した。
全国紙社会部デスクによると、福岡県警が麻薬取締法違反容疑で家宅捜索したのは8月22日。米国から送られてきたサプリに有害な大麻由来の成分「テトラヒドロカンナビノール」(THC)が違法な割合で含まれており、同法違反(輸入)などの容疑で逮捕された男が「送付先から新浪氏に送るよう依頼された」などと供述したという。
新浪氏は記者会見で、4月の米国出張時に時差ぼけ対策のため、現地で市販されていた大麻草成分を含むカンナビジオール(CBD)を購入したと説明。「適法な商品」と認識しており、日本へ持ち帰ろうとしていたという。
しかし、この時は米国からドバイ経由でインドへの出張を予定しており、国際的にCBDは規制が厳しかったため、健康に関するアドバイスを受けていた知人に、日本への持ち込みを依頼していたという。
この知人はサプリを新浪氏の自宅に郵送したが、送り主が不明だったため、家族が捨てたとみられる。その後、知人が福岡県在住の弟にサプリを送るよう手配し、弟はその情報をキャッチした福岡県警に逮捕された。
県警が家宅捜索した際に新浪氏の自宅から違法サプリは見つかっておらず、尿検査でも陰性だった。新浪氏は3日の記者会見で「所持も使用もしておらず、輸入も指示していない。4月に購入したサプリと同一かも分からない」と説明していた。