最近では「美容師のフリーランス化」なども背景に、スキルや知名度のあるスタイリストの採用が難しくなっているようだ。加えて、低賃金と長時間労働を理由に既存スタッフの流出が加速し、従来通りのサービスを維持できなくなるケースも出始めていると聞かれる。
実際に、2025年に発生した美容室倒産のうち「人手不足」が直接的な要因となった倒産は9件発生しており、8カ月累計ですでに前年1年間の件数(9件)に並んでいる。
美容室における2024年度業績をみると、コロナ禍を底に消費者の「身だしなみ」に対する支出は回復傾向となったほか、「口コミやSNSによる集客効果が顕著」といった声も聞かれ、「増益」を確保した事業者もあった。
他方で約3割は赤字経営となったほか、前年度から利益を減らした「減益」(26.0%)が3年連続の増加となった。物価高による節約志向の高まりが逆風となり、リピーター客でも来店頻度が減少するなど、収益確保に苦戦する事業者が目立ち、美容室の業況は二極化が進んだ。
増加が懸念される
3つの倒産要因
帝国データバンクが8月18日に発表した『全国企業「倒産リスク」分析調査(2025年上半期)』によれば、企業が1年以内に倒産する確率を表す独自指標である「倒産予測値」が算出可能な147万社のうち、2025年6月時点で「高リスク企業」は全国に12万8552社(構成比8.7%)存在することが分かった。
わずか半年で1592社増加しており、一定の経営破綻リスクを抱える“倒産予備軍”が高水準で推移していることがわかる。仮にこの12.8万社のうち1%(1280件)でも実際に破綻に追い込まれる事態になれば、トランプ関税の影響も相まって企業倒産へのインパクトも大きくなりそうだ。
これから年末にかけての時期は例年、資金需要の高まりとともに1年を通じて企業倒産が増える傾向にある。そうしたなかで今後増加が懸念されるのは、(1)トランプ関税の影響を受けた倒産、(2)2026年4~9月にピークを迎えるコロナ借換保証の返済開始を契機とした倒産、(3)高水準が続く「粉飾倒産」や「人手不足倒産」などが挙げられる。
引き続き小規模事業者を中心に、2025年の企業倒産は年間1万件を視野に、このまま「微増」傾向がしばらく続く見通しである。