石塚はめげることなく、長谷川に「検定、お願いします」と挑戦を繰り返した。

 レベル12からはストレートと変化球の「ミックス」での配球になり、当時4軍監督だった斉藤和巳(現3軍監督)が「僕がやりますよ」と球種の順番を決めていたのだという。沢村賞2度を誇るホークスの元エースの配球を攻略するのも、これまた厳しい関門になる。

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 R&Dグループのスタッフルームの入り口横には、検定の進捗状況を示す一覧表が貼られている。そのマス目に書かれた数字は、各段階を何度の挑戦でクリアできたかという回数を示している。

 12段階から15段階まで、石塚は、何度もその壁にぶち当たった。

 石塚が挑む「標準B」は、まずフェアゾーン打球7割、かつ打球速度135キロ以上を5割以上。

 この条件下で、12段階はストレート、スライダー、チェンジアップを順番に20球。13段階はこれらのミックス、つまりランダムに20球。14段階はさらにカーブが加わり、15段階ではこの4球種で「標準A」が10打席で4安打、「標準B」は3安打、かつ1長打。ここまでクリアできて、やっと“最後の舞台”に立てる。

 16段階目のマシン設定は「1軍主力投手ミックス」。舞台はもう、完全に1軍だ。斉藤和巳の配球に、長谷川勇也の判定。そして、大谷翔平も使っている最新機器。

 これだけの「環境」を整えられるのが、ソフトバンクの育成システムのすごさであり、球団の底力でもあるだろう。これを、石塚はフルに活用したのだ。