牛窪流エピソード ~困った場面をどう乗り越えたか~

 ある企業研修では、終了時間が迫るなかで複雑な質問が飛んできました。私は「深いご関心を持っていただいて嬉しいです。ただ、このテーマは限られた時間ではお応えしきれませんので」と伝え、要点だけを簡潔に答え、詳細は後日にフォローしました。その後、参加者から「誠実に向き合ってくれた」と高評価をいただきました。

 逆に、質問がゼロで沈黙したこともあります。その時は「皆さん真剣に聞いてくださったからこそ、すぐに言葉にならないことも多いですよね。では逆に、私から質問させていただいてもいいですか? 今日のお話の中で『すぐに職場で活用したい』と思った内容はありますか?」と逆質問を投げかけたところ、次第に会場から手が挙がり始めました。質疑応答は「相互の理解を深める時間」だと改めて実感した瞬間です。

 質疑応答は、質問者の勇気と講師の受け止め方によって場の雰囲気が決まります。完璧に話す必要はありません。大切なのは「誠実さ」と「共感」。場を共有する全員でつくり上げる即興のコミュニケーションです。質問者は「不完全でも声に出す」ことを恐れず、講師は「質問を大切に扱う」姿勢を持つこと。その積み重ねで、参加者全員にとって、学びと気づきの深い時間になると思います。