
元NHKキャスターとして「おはよう日本」「首都圏ネットワーク」などに出演し、現在はフリーアナウンサーとして多方面で活躍する牛窪万里子さん(株式会社メリディアンプロモーション代表取締役)。牛窪さんは、『なぜか好かれる人の「言葉」と「表現」の選び方』など、多くのビジネス書も執筆するなど、言葉と表現によるコミュニケーションのプロフェッショナルだ。そんな牛窪さんによる連載「いま必要な“組織を活性化する”コミュニケーション」の第3回をお届けする。(ダイヤモンド社 人材開発編集部)
「結果」よりも「過程を認めてもらうこと」の大切さ
今年4月より、成蹊大学経営学部で客員教授としての活動が始まりました。
大学での講義テーマは「自己表現力と対人スキル」。アナウンサーとして、長年メディアの現場に立ち、また、マネジメントや新人育成にも携わってきた経験を、今度は若い学生たちに伝える機会をいただいたのです。
初回の授業で、私はこんな問いを学生に投げかけました。
「今までに、誰かの言葉で救われたことはありますか? それはどんな言葉でしたか?」
しばらく考える時間を与えたあと、一人ずつ、学生たちに自分の経験を話してもらいました。印象的だったのは、多くの学生が「落ち込んでいたときに『よく頑張ったね!』と声をかけられたことが心に残っている」と語ったことです。
結果が満足のいくものでなくても、自分の努力そのものを認めてもらえたという実感が、何より嬉しかったのだと言います。
社会に出ると、「結果がすべて」と言われがちです。
結果を出さなければ評価されない。そんな厳しい現実に直面することもあるでしょう。
けれど、学生たちの言葉を聞いて私は気づかされました。
彼らが本当に求めているのは、「結果」よりも「過程を認めてもらうこと」なのだと。
私自身にもこのような経験があります。
新人の頃、あるインタビュー企画を担当し、取材で現場に何度も足を運びながら準備したにもかかわらず、本番ではインタビューが上手く引き出せなかったため、苦い思いをして、かなり落ち込んでいました。しかし、そのときに上司がかけてくれた言葉が温かく、今でも忘れられません。
「今回のリポートは完璧ではなかったかもしれない。でも、現地の人達の笑顔がとても印象的で、あなたがよく取材してきたことが伝わってきたよ」
その言葉を聞いて、「努力をみてくれた人がいる」という安心感を得られました。反省の中にも少し救われた気持ちでした。そして、「次こそは、もっといいインタビューを引き出したい」と前向きな気持ちで仕事に向き合えるようになったのでした。
学生と向き合う日々の中で、その純粋さや若さなりの情熱に、私自身が刺激を受けています。彼らがもっているまっすぐな視点。そして、自分の可能性を信じて学びに向き合う姿勢。そのような新鮮な心を、社会に出てからもどうか忘れずにいてほしいと強く思います。