
くら寿司は2025年度第3四半期時点で、売上高は4%増収するも、純利益前年比22%減となった。収益性が悪化しているが、同社の創業者であり社長の田中邦彦氏は現状をどう捉えているのか。また同質化競争で成長が鈍化している回転寿司業界で勝ち抜くには、何が必要なのか。特集『回転寿司 勝者の条件』の#2で、田中社長に直撃した。(聞き手/ダイヤモンド編集部 大日結貴)
自信をのぞかせる“先見性”
財務では無借金を重視
――昨年の通期決算では営業利益率が2.4%と、同業他社と比べて低く出ています。第3四半期決算でも北米セグメントで営業損失となりました。どのようにお考えでしょうか。
国内事業では最低限の利益は確保できていますし、北米も当然利益が確保できる想定で進めています。その見込みがなければ続けていません。問題はないと考えています。
――では財務において、重視されていることは。
無借金であること、これは必須です。借金をすると返すことに足を引っ張られてしまいます。そのため当社は、上場することが資金調達の手段として最適だと考え、株式上場できない地域には出店しない方針です。実際、株式を上場した米国と台湾で、出店を加速しています。
――FLコスト(原価と人件費の合計)は上がり続けています。どのように対策していますか。
経営する上で最も重視していることは先見性です。これは会社のあらゆる職種、業務で問われます。私にしてみれば、原価の高騰も人件費の高騰も50年前から予測できていました。そうした先見性があるから、わが社は20年前から他社に先駆けて漁業組合と直接取引をしたり、自社養殖の設備を整備したりしてきました。現在サーモンは50%程度の自社養殖で賄えるほどです。
――外食産業、特に回転寿司において、勝つために何が必要だと考えていますか。
自らの目や感覚に自信を持つ田中社長。創業から48年間、回転寿司業界の最前線を走ってきた経験により、現在直面するコスト高と同質化競争を勝ち抜けると自信を見せる。次ページで詳しく話を聞いた。