【面接官の本音】「この人、絶対ないな」と思われる話し方とは?
「1つに絞るから、いちばん伝わる」
戦略コンサル、シリコンバレーの経営者、MBAホルダーetc、結果を出す人たちは何をやっているのか?
答えは、「伝える内容を1つに絞り込み、1メッセージで伝え、人を動かす」こと。
本連載は、プレゼン、会議、資料作成、面接、フィードバックなど、あらゆるビジネスシーンで一生役立つ「究極にシンプルな伝え方」の技術を解説するものだ。
世界最高峰のビジネススクール、INSEADでMBAを取得し、戦略コンサルのA.T.カーニーで活躍。現在は事業会社のCSO(最高戦略責任者)やCEO特別補佐を歴任しながら、大学教授という立場でも幅広く活躍する杉野幹人氏が語る。新刊『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』の著者でもある。

【面接官の本音】「この人、絶対ないな」と思われる話し方とは?
採用面接では、面接を受ける人はいろいろなトピックについて答えなくてはいけない。自己紹介、自己PR、志望動機、乗り越えた困難、などなど。いろいろと聞かれ、いろいろと答えることになる。
面接は時間が限られているため、シンプルに答えた方が面接官との会話も弾み、面接がうまくいきやすい。いろいろと答える、それもシンプルに答えるのは大変なので、事前に自分の答えを用意して面接に臨む人もいる。
しかし、そのように自分が伝えたいことで頭が一杯になっている人は、面接が上手くいかないことが多い。
自分に矢印が向き過ぎて、相手が知りたいことから外れたことをいろいろと、そして、延々と言ってしまうことがあるからだ。
ひどいときには、面接官が軌道修正しようと、話している最中に合いの手を入れながら、別の質問をして話を変えてしまうこともある。そのようなときは、面接の結果は望ましいものになることはない。
そもそも面接官は、何を聞きたいのか?
面接官が知りたいこと、すなわち、面接官にとっての論点は、面接によってさまざまだ。
その人が応募している職種にマッチしていて活躍できそうかを確かめる、スキル面のフィットを確認するもの。その人が能動的に動けて長く働いてくれそうかを確かめる、ミッション面のフィットを確認するもの。その人がまわりのメンバーとうまくやっていけてまわりと協力できたり、切磋琢磨できたりしそうかを確かめる、カルチャー面のフィットを確認するもの。
面接は一次面接、二次面接などでなにを確認するかを役割分担することもある。また、一つ前の面接で見つかった懸念点の確認が次の面接への申し送り事項になることもある。
このため、面接官にとっての論点は毎回同じではなく、異なることはよくある。そして、当日の面接での会話によって、面接の最中に面接官が知りたい論点が変わることも日常茶飯事だ。
その場で面接官の論点がわからないと、どんなに一生懸命に考えてきた内容を伝えても、相手が知りたい論点から外れたことを言ってしまうことになり、相手に伝わらなくなるのだ。
もっと言うと、外れている感覚から焦り、いろいろと言ってしまい、相手の面接官に「いろいろ言っているが、知りたいことに答えてくれない」という悪印象を持たせてしまうかもしれない。
面接で「受かる人」は「相手の知りたいこと」で頭を一杯にする
では、面接で受かる人は、どのような伝え方をしているか。
面接で受かる人は、「自分の伝えたいこと」で頭を一杯にするのではなく、「相手が一番知りたいこと」で頭を一杯にする。
面接で受かる人は、相手の面接官がその場で一番知りたいこと、すなわち、一番大事な論点がなにかをとことん考えてから答える。
相手がスキル面のフィットを気にしているなと思えば、自分が事前に考えてきた内容を捨ててでも、いかに自分のスキルがその仕事にフィットしていて活躍できそうかを理解してもらえるように答える。
相手がカルチャー面のフィットを気にしているなと思えば、同じく自分が事前に考えてきた内容を捨ててでも、これまでにまわりと協力や切磋琢磨をしてチームとして結果を出してきたことを理解してもらえるように答える。
相手に合わせるために、事前に考えて切れてない内容を答えなくてはいけないこともある。考え切れていない内容なため、多少は緊張したり、活舌が悪くなったりすることもある。
それでも、とにかく、自分の伝えたいことを伝えるのではなく、相手の一番知りたい論点に答えることを優先する。それも、相手がストレートに答えがもらえたと思えるように、シンプルな1メッセージで答える。
面接官にとって一番大事なことは?
面接官にとって一番大事なことは、自分が抱えている論点に面接が終わったときに答えが出ていることだ。
そうであれば、面接を受ける人は、自分が伝えたいことで頭を一杯にしていろいろと伝えるのではなく、頭を相手の一番知りたいことで一杯にして、その論点に向けて答えをシンプルに1メッセージで届けた方がよいのだ。
なにかを相手に伝えたいと思うときほど、自分の伝えたい内容や自分の伝え方に拘るのではなく、相手にとってなにが一番大事な論点なのかを理解することに拘ろう。
よくできた1メッセージは、相手の一番大事な論点に絞ってストレートに答えることによって、はじめて生まれるものなのだ。
(本原稿は『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』を一部抜粋・加筆したものです)