ディーラービジネスに再参入したヤマダHD
住宅ローンでのEV購入をアピール

 今回ヤマダHDが始めたのは、電気自動車(EV)と住宅とのセット販売だ。EVを動く蓄電池と位置付け、太陽光システムと、EVに充電した電気を家庭内で利用できるシステム「V2H」を標準装備したスマートハウスを提供する。

 セット販売の強みはクルマの購入費を低金利の住宅ローンに組み込める点にある。

 通常、新車をディーラーのローンで購入した場合、メーカーにもよるが4~5%の金利が上乗せされる。ただ、住宅ローンでEV購入費を賄えば、メーカー系列のディーラーを経由して購入するよりも低金利で資金を調達できる。ヤマダHDは、こうしたメリットを顧客にアピールして販売拡大を狙う。また、EVやV2H、太陽光発電システムに加え、白物家電なども一括で購入してもらうなどシナジー効果も見込む。

 EVは三菱自動車の「eKクロス EV」や日産自動車の「サクラ」などを用意。EV単体の販売は法人向けから始め、今後、既存の店舗で一般消費者向けにも販売する青写真を描いている。

オートバックスセブンもEV販売に本腰
背景にカー用品市場の成長鈍化

 EV販売に乗り出したのは、家電量販店だけではない。オートバックスセブンは、昨年11月に「BYD AUTO宇都宮」を開業した。同社は15年からディーラー事業に参入していたが、EV普及を見据えて、22年に中国のEVメーカーのBYDと販売契約を締結。近く東京都内にも店舗を複数開業する計画だ。

 オートバックスがEV販売に本腰を入れる背景に、国内のカー用品市場が成熟し、成長鈍化がある。EVを販売すれば、主力のカー用品に加え、アフターメンテナンスやEV充電器の設置でも稼げるようになる。既存店舗を有効活用し、初期費用を抑えることも可能だ。

 さらに、昨年末には軽商用EVの開発や販売を手掛けるベンチャー企業ASFに出資するなどEV事業の強化に余念がない。

 24年は大手自動車メーカー各社がこぞって次世代型EVを発売する1年となる。国内のEV市場が拡大する中で、今後もEVの販売を商機とする異業種参入が相次ぐとみられる。ヤマダHDやオートバックスのEV販売は緒に就いたばかりで、収益の柱に育つのはまだ先だろう。ただ、既存のディーラーがEVへの対応に手をこまねいていたら、築き上げてきたシェアは新興勢力に奪われかねない。

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