または、「確かに学費の値上げがずいぶん前に分かれば、転校を考える時間があるかもしれない」といったように、「速報」を伝えるメディアの役割を理解してくれるかもしれません。

 いずれも重要な論点であり、そこからメディアをめぐる様々な議論を生徒たちと始めることができます。

「例え話」をする上で
注意すべき2つのポイント

 もし、講演の相手が高校生ではなく製造業で働く方々なら、「工場の生産ラインでトラブルが起こるとします……」といった例えを使います。聞き手のみなさんは、過去の体験などをもとに具体的な状況を思い浮かべ、話を聞いてくれます。

 このように、聞き手の立場や属性によって、例え話の内容やパターンは変えるようにしましょう。聞き手にとって身近なネタを使ったほうが、より伝わり、講演などでは一気に会場の集中力が高まると思います。つまり、聞き手の属性(職業、年齢層、性別、地域性など)を事前に把握し、どんな例え話が最も効果的か考えておくことが大事です。

 しかし、「例え話」には2つの大きな注意点があります。

 1つ目は、中身について事前に勉強する必要があることです。

 聞き手が所属する業界に関して、浅はかな例え話をしてしまうと「なんだ、その程度しか分かっていないのか」とネガティブな印象を与えてしまい、話に説得力が無くなります。私の場合、講演では、事前に主催者側や聞き手のことをよく知る方々と話をして、「こういう例え話ならば聞いてもらえそうでしょうか?」とあらかじめ調整することもあります。その業界の本を読んだり、ニュースを調べたりもします。

 2つ目の注意点は、例え話は失言のリスクを高めるということです。

 不用意なことを言って失礼な印象を与えたり、最悪の場合、その業界や土地でタブー視されていることを盛り込んでしまったりすると致命的です。

 実際に、不適切な例え話ですべてを台無しにしてしまうケースもあります。過去にある県知事が、職員への訓辞で「県庁はシンクタンク。野菜を売るのとはちがう」と発言したり、選挙の応援演説で、他の地域の候補者について「あちらにはコシヒカリしかない」などと発言し、大きな批判を浴びたりしたことがありました。