メンタル不調でも仕事を続けられる人と、燃え尽きてしまう人の決定的な境界線
誰にでも、悩みや不安は尽きないもの。とくに寝る前、ふと嫌な出来事を思い出して眠れなくなることはありませんか。そんなときに心の支えになるのが、精神科医Tomyが教える 50代を上手に生きる言葉(ダイヤモンド社)など、累計33万部を突破した人気シリーズの原点、『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)です。ゲイであることのカミングアウト、パートナーとの死別、うつ病の発症――深い苦しみを経てたどり着いた、自分らしさに裏打ちされた説得力ある言葉の数々。心が沈んだとき、そっと寄り添い、優しい言葉で気持ちを軽くしてくれる“言葉の精神安定剤”。読めばスッと気分が晴れ、今日一日を少しラクに過ごせるはずです。

【精神科医が教える】心が壊れる前に!「もう無理…」となる人が無意識に越えている“危険なライン”の正体Photo: Adobe Stock

メンタル疾患と仕事の両立における悩み

今日は、ある方からのご相談にお答えしたいと思います。どのようなご相談かと言いますと、「メンタル疾患を抱えながら仕事をすることについてどう思うか」というものです。

この方は、ご自身もメンタル疾患を抱えながら仕事をバリバリとこなし、管理職にまでなられたそうです。しかし、仕事が多忙で大変なため、ご自身の健康を心配されています。「本当はパートタイムなどに切り替えたほうが良いのかもしれないけれど、せっかくここまで評価されたのに、今さら働き方を変えるのは悔しい」と感じていらっしゃる、とのことでした。

このようなお悩みは、決して珍しいことではありません。もちろん、最終的なアドバイスは、お一人おひとりの状態を把握している主治医に相談していただくのが一番です。そこで今回は、あくまで一般的な考え方としてお話しします。

精神疾患後の「キャパシティの変化」を受け入れる

精神疾患を経験し、それを抱えながら生きていくうえで大切なのは、疾患にかかる前と今とでは、自分のキャパシティ(許容量)が変化しているという事実を受け入れることです。

これは仕方のないことなのです。例えば、年齢を重ねると若い頃のように速く走れなくなるのと同じようなものだと考えておくと良いでしょう。ですから、ご自身の現状を冷静に見つめておく必要があります。

自分の限界ラインを見極める重要性

私自身も、うつ病を経験してから「これ以上やるとダメになる」というラインが分かるようになりました。その限界が近づくと、「少しボーッとする」「イライラしやすくなる」「頭が回らない感じがする」「疲れているのに寝つきが悪い」といった、さまざまなサインを実感できるようになったのです。

この経験から、「ここまでは快適に仕事ができるけれど、ここから先は危ない」という自分なりのラインが見えてきたのです。普段からご自身の「限界ライン」を意識し、その手前で仕事を終えられるように調整することをおすすめします。

限界ラインを守るための具体的な工夫

仕事をしていると、そう簡単にはいかない場面もあるかもしれません。しかし、その限界ラインは命綱です。なんとしても死守するために、例えば以下のような工夫が考えられます。

・上司に自分の状態を伝えておく
・「これぐらいの業務量は難しいです」と正直に伝える

そのラインを越えてしまうと、再発したり病状が悪化したりして、本当にやりたいこともできなくなってしまいます。私は、そのラインを「焦がさない」ようにすることを常に意識しています。

私自身、かつてはブレーキをかけずに働いてみて「これ以上は無理だ」という限界を知りました。だからこそ、その手前で止められるように、自分の周りの環境を整えてきました。そうすることで、自分が本当にやりたいことが見え、物事の優先順位がはっきりしてきたのです