経営データから見える残念な実情

 気がかりだったのは、店内の閑散とした状況である。金曜の夜にもかかわらず、客席には空席が目立ち、にぎわいという点では物足りなさを感じた。近隣の他のチェーン店と比較して、外国人観光客や女性客に向けたアピールが不足している印象は否めない。

 この現場の感覚は、大庄が公表している経営データによって裏付けられよう。

 同社の2025年8月期中間期決算説明資料によれば、既存店の売上高は前年同期比で104.5%と回復基調にある。客数が103.9%、客単価が100.5%と、いずれも前年を上回っている。

 これは、料理の品質が顧客に評価され、リピーターを確保できている証左であり、「美味しい」という現場での体験と一致する。

 一方で、飲食事業セグメントの営業利益は6億7500万円と、前年同期の6億8900万円から微減している。

 会社側は、原材料や各種コストの増加が利益を圧迫していると説明する。店舗数は減少の一途をたどっており、2024年8月末に243店舗だった直営店は、2025年2月末には236店舗まで減少した。

 経営戦略として「庄や」業態のリニューアルやインバウンド対応の強化を掲げているものの、現場で感じたアピール不足を鑑みれば、その戦略が末端の店舗まで浸透するには、まだ時間を要するのかもしれない。

 レストラン経営の失敗要因を分析した学術論文「Why Restaurants Fail」(なぜ、レストランは失敗するのか)は、飲食業界における成功と失敗の分岐点を鋭く指摘している。

 この研究は、多くの経営者が陥りがちな誤解に警鐘を鳴らす。特に重要な示唆を含む一節を以下に引用したい。

《一部のオーナーは、良いレシピや料理技術があれば自動的に成功がついてくると信じていた。しかし、こうしたレストランは料理の質に肯定的な評価を受けていながらも、しばしば失敗に終わった》

 この言葉は、レストラン経営の本質が単なる料理の腕前だけでは成り立たないという厳しい現実を突きつけている。