
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は第122回(2025年9月16日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)
知ってる人しか知らないアンパンマン
嵩(北村匠海)、渾身の作品『怪傑アンパンマン』が人気作曲家・いせたくや(大森元貴)の音楽で大人も子どもも楽しめるミュージカル化。
羽多子(江口のりこ)も知っているくらい有名な演出家・マノ・ゴロー(伊礼彼方)も参加して豪華な布陣となった。
だがその最初の顔合わせに嵩は来ない。雑誌の急な変更と校了が重なって身動きが取れない。のぶ(今田美桜)とメイコ(原菜乃華)が見学に来ていて、当の嵩がいなくて拍子抜け。のぶはせっせといせの話などをメモしている。老眼鏡をかけている。
多分、久しぶりに速記だと思ったら、やっぱりそうだった。あとで、嵩がそれを見て「久しぶり」と喜ぶ。「昔取った杵柄」とのぶは微笑む。
出演者たちに『アンパンマン』について説明するにあたり、メイコが「姉は誰よりもアンパンマンに詳しいです」と提案し、いせはのぶに話をしてもらうことにする。
遠慮しつつ、前に出て、メガネをとって、「僭越ながら……」と解説をはじめるのぶ。とっても幼い子どもたちがアンパンマンを気に入ってくれるとうれしそうに語る。
「コンセプトやのうてお姉ちゃんの願望が入っちょる」とメイコが笑うが、いせは「そういうのが聞きたいです」と言う。
「知ってる人しか知らないアンパンマンですが みなさんのお力を貸してください。いまはよろよろ飛んでいますが、アンパンマンはもっと遠くへ飛べるはずです」とのぶは皆に語りかけた。
のぶはいつも「もっと遠くへ飛べる」と言う。自分が「全力で走れ 絶望に追いつかれない速さで 」と言われてきたから、アンパンマンには遠くへ飛んでほしいと願うのだろう。