「知らない人は知らないけど知ってる人は知ってる」ゆるい歌詞なのに、大森元貴が歌うとやたら説得力【あんぱん第123回】『あんぱん』第123回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は第123回(2025年9月17日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)

定年をどう過ごす? 健太郎がミュージカルに参加することに

「熱血ミュージカル『怪傑アンパンマン』」は家族総出で準備中。のぶ(今田美桜)とメイコ(原菜乃華)に加え、定年を迎えた健太郎(高橋文哉)まで手伝いに参加することになった。

 いせたくや(大森元貴)プロデュースで人気演出家・マノ・ゴロー(伊礼彼方)もいるというのに、予算も少なくずいぶん手弁当な印象である。いせの趣味の演劇という位置づけなのかもしれない。

 嵩(北村匠海)が岩男の息子・和明(濱尾ノリタカ)と会っていたとき、健太郎が嵩のマンションに来ていた。羽多子(江口のりこ)とご飯を食べながら、定年してすっかりヒマになってしまった話(川を伝って海に行ってしまった)をすると、羽多子が、メイコと一緒にミュージカルの手伝いをすればいいと助言する。

 その晩、嵩とのぶはこの日出会った和明のことを思ってベランダで空を見ながら語り合う。和明と子どもが『アンパンマン』を読んで笑顔になってほしいとのぶは思う。

 戦争で父・岩男を亡くしたことで父の背中を見て育つことのなかった和明のように、戦後の日本には父が不在の子どもたちが道に迷っていたのだろう。もしかしたら、戦争で“父”がいなくなったことがいまの日本に大きな影響を与えているのかもしれない。

 ミュージカルの稽古中、健太郎もやって来て、準備に加わる。NHKでディレクターをやっていたと聞いて、演出家・マノは面倒くさいと思わないだろうか。いくらマノが一流でも、あのNHKでディレクターだった人に助手をやってもらうのも気を遣ってしまいそう。

 健太郎は嵩とテレビ番組のほかに紙芝居を作っていたと自己紹介するが、紙芝居って戦時中じゃないか。それはキャリアに入るのか。