社会保険に加入すると、給与から保険料が天引きされ、目先の手取りは減ってしまう。そのため、これまでは社会保険がかかる「年収の壁」を超えないように労働時間を調整するのが、賢いパート主婦の働き方とされてきた。だが、社会保険は支払った保険料に見合う給付が用意されており、病気やケガをした時や老後に働けなくなった時に充実した給付を受けられる。
保険料負担の面だけ見れば損しているように思えても、給付を考えると理に叶った制度で、万一のリスクヘッジとして重要な役割を果たしているのだ。そして、社会保険の恩恵を受けられる人を増やすために、国もさらなる社会保険の適用拡大に向けた法整備を進めている。
将来的には「労働時間の壁」も
縮小・撤廃される可能性
2025年6月に公布された年金制度改正法では、従業員数51人以上となっている企業規模要件を、27年10月から35年10月にかけて段階的に撤廃していくことになった。また、3年以内に賃金要件を撤廃することになっていたが、このところの最低賃金の上昇を受けて、来春に前倒しされる可能性が高くなっている。
ただし、週20時間という労働時間要件は残っているので、「年収の壁」が「労働時間の壁」に塗り替えられ、社会保険料の負担を免れたい事業主や労働者が労働時間を調整するという因習は、そう簡単にはなくならないだろう。
だが、これまでの社会保険の適用拡大の流れを見ていると、将来的には「労働時間の壁」も縮小・撤廃される可能性がある。仮に、社会保険加入の労働時間要件が週10時間未満に縮小された場合、社会保険の適用ラインは月収4万~5万円程度に引き下げられる。
それなのに、社会保険料を支払いたくないからといって、「壁」の範囲に労働時間を抑えようとすると、収入は減る一方だ。前述したように、社会保険料は負担した分だけ見返りもある。長い目で見れば、保険料を支払ってもたくさん稼いだほうが手取りは増えて、老後の年金も増やすことができる。
これからの時代は、パートやアルバイトでもきちんと社会保険に加入できる事業所で働いて、傷病手当金をもらえるようにしておくのが安心でお得な働き方だ。