「盗んだ後はフェイスブックを使って、在日ベトナム人の盗品買い取り屋や運び屋に連絡する。最終的に、たとえば化粧品なら日本国内で1万円のモノが、ベトナム国内の市場では3000円くらいで売られることになる。盗品の仕入れ値はタダだから、買い取り代や荷運び代を上乗せしても、原価よりも安い価格で市場に流れてしまうんだ」

 確かに、私が後日、ベトナム国内に取材に行った際も、街角で日本の正規品の健康食品や乳児用品などを販売する商店を何軒も見かけた。

 首都のハノイだけではなく、中越国境の地方都市であるモンカイでも、カルビーのシリアル食品やムーニーのおむつを大量に取り扱っている小商店を見つけて驚いたのだが、あれはもともと偽装留学生や逃亡した技能実習生たちが「仕入れ」をおこなった品物の行き着く先だったのだ。

 すこし前の話だが、2014年3月にはベトナム航空の当時25歳のCAが、この手の盗品の運び屋容疑で警視庁に逮捕され、さらに副機長1人とCA5人の計6人がベトナム航空社内で停職処分を受けている。

 報道を調べると、同様の事件はそれ以前にも何度か起きている。ベトナムのナショナルフラッグの関係者が多数携わった不祥事は、「ボドイ」たちの窃盗行為に巨大な組織的バックグラウンドがあることを感じさせる。

在日ベトナム人が証言する
窃盗グループの「元締め」

「窃盗・転売グループのバックにいる元締めは、ベトナム難民の子孫なんですよ」

 広島県内に住む別の在日ベトナム人で、偽装結婚により日本に定住して技能実習生関連のビジネスに従事しているグエンという姓の男性は、窃盗ネットワークの背景についてこう話している。

「彼らは日本生まれで、日本語も流暢ですから。ベトナム料理店なんかを隠れ簔に、窃盗ネットワークを仕切っているんです」

 往年の日本によるインドシナ難民の受け入れは、定住促進施設で言語や生活習慣の教育がおこなわれて一定の成果を挙げるなど、日本の難民受け入れ事業の成功例として評価されることが多い。