「子育てに疲れる」「子どもの将来に不安を感じる」「子どもを愛するよりも完璧な親になることを優先してしまう」「それが間違っているとわかっているのに、他の家族に合わせてしまう」など、子育てに苦悩する親は数多くいます。そんな親たちが考えを変え、行動を変えた育児療法がいま、話題に。アメリカで20年以上親子と向き合ってきた医師による医療現場の専門的な知識をもとにした新刊『ジョンズ・ホプキンス大学児童精神科医が教える 育児の本質』より、実用的で誰もが取り組めるシンプルかつ具体的な子育て法を紹介していきます。

【アメリカの児童精神科医が教える】子どもをゲームやスマホなどの過度な熱中から守る方法Photo: Adobe Stock

子どもがゲームやスマートフォンに夢中になる理由

「子どもが勉強もしないで、何時間もスマートフォンばかり見ているんです」

 近年、ゲームを巡って頭を悩ませる親が増えています。多くの親が、毎日のように子どもとバトルを繰り広げています。子どもが暇さえあればゲームをしようとするためです。ゲームだけではありません。子どもからスマートフォンを取り上げようとすると、たちまち争いが勃発します。

 ゲームのやりすぎや長時間のスマートフォン使用は、健康にも悪影響を及ぼします。肥満や視力の低下、姿勢や体型の歪み、関節への負荷などの問題を招きかねません。スマートフォンを使うこと自体に問題はありません。酒もアルコールそのものが問題なのではなく、飲みすぎや依存が問題なのです。ゲームやスマートフォンの問題をどう解決すればいいのか、相談に訪れる人は大勢います。

 しかし、「問題をどう解決すべきか」を考える前に、「なぜこの問題が生じたのか」を考える必要があるのではないでしょうか。

 カナダのマギル大学の研究チームによると、韓国は調査対象24か国中、5番目にスマートフォンの使用率が高いことがわかりました。1位から4位は中国、サウジアラビア、マレーシア、ブラジルでした。アメリカは18位、スイスとフランス、ドイツはそれぞれ22位から24位でした〔日本は15位〕。実際に、私が感じている韓国とアメリカの若者のスマートフォンやゲームの利用実態とさほど変わらない印象です。これは、若者の日常の過ごし方にもかかわる問題です。

 子どもたちがスマートフォンを手放せないのは、第1に一日中勉強ばかりで完全に燃え尽きているためです。第2に、外で遊べずケージの中に閉じ込められてきたためです。残念なことに、勉強以外の興味や趣味を持つ暇さえ与えられなかったのです。

 子どものころからたくさん体を動かして、スポーツや音楽など好きなことを続けている子どもは、スマートフォンを操作する以外にもやることがたくさんあります。ところが、勉強しかしてこなかった子どもたちは、遊び方も休み方も知りません。スマートフォンをいじる以外に楽しみがないのです。ほかのことはしたことも、する余力もありません。

もっと面白いことを見つける機会を作る

 方法はシンプルです。子どものころからたくさん遊ばせるだけです。すると、ほかの活動をもっと好きになる子がほとんどです。音楽、スポーツ、美術など。子どもはみんなアーティストと言われるのにはわけがあるのです。思いきり遊びながら芸術やスポーツといったほかの活動に造詣を深めた子どもたちは、ゲームにばかり夢中になるほうが珍しいくらいです。ほかの活動をしているほうが面白いのです。

 実際にアメリカだけを見ても、韓国の子どもたちほどゲームに没頭することはありません。子どもに限らず、中高生たちもバスケットボールやサッカー、野球チームの仲間と練習しに行ったり、友達と一緒にショッピングモールで遊んだり映画を見に出かけて行くので、家でゲームをする時間があまりありません。外で遊んで休むほうが楽しいからです。

 しかし、この国の子どもたちはどうでしょうか? 来る日も来る日も一日中塾で勉強し、家に帰ってくるころには頭の中が真っ白に燃え尽きています。だから、家では考えなくてもできるゲームがしたくなるのです。ゲームをしながら、ただぼうっと頭を休ませたいと思うのです。勉強以外に何もできない環境を作っておいて、今さらゲームをやめてほかのことをしろと言っても、子どもを戸惑わせるだけです。

 もちろん、アメリカの子どもたちもゲームをします。でも、ゲームで遊んでも少ししたら外に出ます。友達とバスケットボールをする時間になったからです。そのほうが楽しいのです。

 なぜそれができるか? 子どものころからそうしてきたからです。

 もし子どもがまだ小さいなら、一日も早く子どもを思いきり遊ばせて、ゲームのしすぎやスマートフォンの過度な使用を予防しましょう。子どもたちに芸術やスポーツを教え、自然を体験させてあげましょう。

(本原稿は、『ジョンズ・ホプキンス大学児童精神科医が教える 育児の本質』からの抜粋です)