JR東日本Photo:PIXTA

JR東日本は9月9日、鉄道を中心とするモビリティ事業の中長期成長戦略「PRIDE&INTEGRITY」を発表した。コンセプトは少子高齢化やニーズ・価値観の多様化、インフラの老朽化など事業環境の変化に対応した、「新たな価値の創造」と「事業領域拡大」。これにより2031年度の営業収益を2024年度比2000億円増の2兆円超に拡大するとしている。JR東日本が描くモビリティの未来像とは。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

「モビリティ戦略」で
掲げる4つの項目

 JR東日本は今年7月、2034年度を目標年次とするグループ経営ビジョン「勇翔2034」を発表し、モビリティと生活ソリューションの二軸経営を推進すると表明した(参照)。

 生活ソリューション事業については昨年、中長期ビジネス成長戦略「Beyond the Border」を発表しているが、「PRIDE&INTEGRITY(以下、「モビリティ戦略」)」はモビリティ事業における方向性を示したものだ。

「モビリティ戦略」は「10年後へのアプローチ」として、「安全レベルの向上」「収益力向上・社会課題解決」「技術革新・構造改革」「社員の働き方改革」の4項目を掲げる。各項目には目指すべき姿や具体的な取り組みが列挙されているが、個別に取り上げるのは煩雑になるので、JR東日本の現状認識と時代の要請を軸に、もう少し噛み砕いて解説したい。

 同社が経営のトッププライオリティに据えるのが「信頼」だ。その前提となるのが「究極の安全」だが、残念ながら相次ぐ新幹線トラブルで信頼は揺らいでいる。もっともそれぞれのトラブルは設備などの不具合により車両が緊急停止したもので、ある意味では安全を確保した結果だ。