東北新幹線トラブルでの
SNSの投稿が話題に

 同社は「グループ安全計画2028」で、過去最大規模となる5カ年計1.3兆円の安全投資を進めており、不動産開発ばかりに力を入れているからトラブルが起こる、というのは妥当ではない。全体的な事故件数も顕著に増えているわけではないが、影響範囲の大きいトラブルが相次いでいるのは事実である。

 むしろ問題は「安定輸送」だ。「モビリティ戦略」は「収益力向上・社会課題解決」の中で、「安心できるサービスをお届け」として、「安定した輸送で移動がもっと便利に」なることが収益力向上につながるとしている。

 先日の東北新幹線のトラブルで、楽しみにしていたライブに間に合わなかったというSNSの投稿が話題となった。予定通りに移動できない交通機関が「信頼」されるはずもない。安定輸送については収益力が低下するからではなく、公共交通機関が当然満たすべき信頼性の問題として捉え、取り組みを強化してほしい。

 安全・安定輸送は現場を支える社員があって成り立つものだ。「モビリティ戦略」は「社員一人ひとりが安全を担い、みんなで安全を創る」ために、仕事の本質を理解してルールを順守する必要があるとしている。ただ、昨今のトラブルは社員の安全意識の低下というより、人手不足、管理職不足により現場の余裕がなくなっていることが要因であるように思える。

 そうした中、重要性が増すのが「技術革新・構造改革」「社員の働き方改革」だ。鉄道設備は近年、多機能化、高機能化で複雑さを増しており、これまでとは異なる対応が必要だ。

 同社の広報担当者は「新幹線は電子機器の塊になっているが、これまでのメンテナンスは機器が壊れた場合、壊れた部品を特定して交換する体制だった。しかし電子機器は影響範囲が分からないことが多いので、今後は不具合があった場合は一式取り替えていく」ことで品質管理を徹底すると述べた。

 あわせて設備のメンテナンスフリー化、設備・車両のスリム化など業務自体の削減、センサーで機器の状態をモニタリングすることで故障の予兆を把握するCBM(Condition Based Maintenance)の拡大など、メンテナンス体制の再構築が重要になる。